研究課題/領域番号 |
23520549
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
山田 敏弘 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (90298315)
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キーワード | 岐阜県方言 / 方言辞典 / データベース |
研究概要 |
平成24年度は、平成23年度に構築した岐阜県の方言データベースを利用して、方言に関する、①県内記述の一覧、②語誌の記述、③県内類義表現の一覧、④県外の当該語形の分布状況を記述した、『岐阜県方言辞典』の作成を中心におこなった。 『岐阜県方言辞典』は、ア~コについて第一巻として平成24年3月に刊行してあったものに続き、サ~トについて第二巻として平成24年6月に、続いてナ~ンについて第三巻として平成24年10月に科研費にて印刷作成し刊行した。当該研究成果は、県内外の研究者とともに、広く県民に供されるよう図書館に配布した。このような詳細な語誌と分布を一覧できる方言辞典は、岐阜県内にこれまで存在していなかったことから、岐阜県方言の基礎的研究に資することは疑いようがない。 方言辞典刊行と同時に、「岐阜県方言として記述される共通語」(『岐阜大学教育学部研究報告 人文科学』61-1)として県内の方言記述に関する論考を発表し、「共通語」と「方言」という意識が地方で方言を記述する者の中でどのように揺れ動きつつ、地方で「方言」という意識が出来上がっていくかを解明しようと努めた。 研究計画としては、WEBでの方言データベースの公開を予定していたが、方言データを逐次追加しながらの作業になったことや、公開用データの保存場所(サーバー)の確保が、メンテナンス上困難を伴うことから、現在中断している。この成果報告に関しては予定より遅れたが、最終年度である平成25年度に向けてこの点を克服し、岐阜県方言のデータベースを電子的に公開することで補っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」にも示した通り、WEB等での方言データベース公開については、その恒常的メンテナンスの問題から停滞している。今後は、より安全な方法によって公開するよう変更も含め対応し、当初計画の目標を科研費最終年度である平成25年度末までに達成していく。 岐阜県方言の語彙に関する報告については、予定以上に実績を積み重ね、主立った語彙に関する語誌と分布の報告が平成24年度までにおこなうことができた。そのため、当初研究計画にはなかったオノマトペや挨拶方言などについても、まとめた辞典を作成することで、平成25年度の成果として、計画以上の達成を目指していく。また、文法項目についての整理も急ぐ。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、岐阜県方言のデータベース完成に全力を注ぐ。すでに、エクセルデータとして、基本的な出力は終わっており、最終的な確認作業をおこないカ行まで進んでいる。平成25年度前半には、データの確認を終え、検索などができるソフトへの移植をおこない、電子的な公開をしていく。 同時に、オノマトペや挨拶方言に関する岐阜県方言辞典の刊行を25年度夏までに、また、文法表現についても年度内に刊行することを目指していく。 研究の基礎データとしての方言データを整備することが本研究の主たる目的ではあるが、その関連した研究としての論文発表と、さらに社会貢献を見据えた応用もおこなっていく。岐阜県方言として地域的な偏在が見られる語彙について、近隣の、特に福井県や愛知県との関係を中心に研究論文を発表することもそのひとつである。また、次の世代に方言を引き継いでいってもらえるよう方言教育の教科書を作成していくことも視野に入れつつ、本データベースの応用を考えていくことも課題である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、近隣県での方言データの収集や県内の特定地域(郡上市白鳥町石徹白、飛騨市神岡町山之村地区等)での、より細密な調査をおこなうなど、データベースの裏付け的な調査をおこなうため、旅費に20万円ほどを予定している。 また、冊子としての『岐阜県方言辞典』を、オノマトペ等の表現編として1冊、文法編として1冊刊行することに、50万円を予定している。WEBの公開は、学内の協力を得るなどして、なるべく費用の掛からない方法にて実現していくことを予定している。
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