研究概要 |
本研究は、従来気づかない方言などとして関心が示されてきた学校方言(授業ほか学校に関わる用語のうち地域特有のことば)について、学校建築用語に絞り、文献資料と方言資料から総合的に検討することで、個々の学校方言並びに標準語の成立と展開を分析し、同時に複数の建築用語を重ね合わせることで、学校方言に共通する語彙論的な特徴と、成立と展開に関する一般的な傾向を導き出すことを目的とした。 学校用語は江戸時代の藩校に端を発し、明治時代の学校制度の開始から現代まで続く分野である。その意味で従来日本語資料として看過されてきた教育史資料及び各種法令を、現代語考察の資料群として位置づけることも目指した。 最終年度である本年度は、国立国会図書館ほかで学校用語の確認すると共に、これまでのデータ入力と課題を「放課」等の学校用語に関してネットによる全国調査を試みた。そして本研究の導入となった「体育館」に関して「愛知県一宮市に置ける「屋運」の分布」をまとめることができた。元々社会教育分野での使用であった「体育館」が、「屋運」の誕生でどのような衝突があって学校方言になっていったかという事例研究ができた。「オクウン」(屋内運動場の略称)の語誌を明らかにすると同時に、発生から周辺への広がりの実態を明らかにした。科研費課題全体では「法令関係」資料(国・地方別)、「教育史」資料、「学校史」資料、「生徒手帳」などの学校規約などに描かれた教育関係資料が学校建築用語を考察分析する上で必須であることを実証した。つまり、「従来日本語資料として看過されてきた教育史資料及び各種法令を、現代語考察の資料群として位置づけることも目指し」た研究目的は,十分な事例研究数とは言えないが、達成できたと考えている。
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