研究課題/領域番号 |
23520558
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
浅川 哲也 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50433173)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 江戸時代末期人情本 / 春色恋廼染分解 / 毬唄三人娘 / 山々亭有人 / 松亭金水 |
研究概要 |
江戸時代末期の人情本資料のうち、山々亭有人作の『春色恋廼染分解』全五編(1860年初編)の本文の全文活字化を完成させた。併せてこの活字本文を典拠とした総索引を完成させた。この成果は、単著『春色恋廼染分解 翻刻と総索引』(おうふう)として刊行し公開した。この『春色恋廼染分解』本文について、その本文批判に関する研究成果を國學院大學院友学術振興会総会において研究発表した。また、松亭金水・山々亭有人作の人情本『毬唄三人娘』全五編(1862年初編)の本文の全文活字化を完成させた。この成果は首都大学東京大学院紀要『人文学報』でその全文を公開した。 人情本資料『春色恋廼染分解』・『毬唄三人娘』ともに、正確な活字化の本文はこれまでになく、正確な活字化での本文公刊は本邦史上初の成果である。特に『春色恋廼染分解』本文の総索引は江戸時代末期の人情本のものとしては初めての成果である。これら人情本資料の本文活字化と総索引の完成は、日本語学のみならず日本文学・日本歴史学においても基礎的な資料として資するところの大きい研究成果となった。 これらの活字化作業を経過する上で明らかとなった、山々亭有人と松亭金水の文体の相違、丁寧語「です」使用の相違、漢語語彙の唐話(白話)語彙の使用状況の差違、『日本国語大辞典第二版』中にある初出用例を遡及する語彙使用の例などについて、『春色恋廼染分解 翻刻と総索引』中に収録の「解説」において研究成果として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『春色恋廼染分解』の総索引作成と『毬唄三人娘』の本文の正確な活字化作業は完成し、それぞれに公開することができた。いずれの成果も公刊公表しているので、初年度の研究目的の過半は達成できた。本文の活字化という基礎作業の完成を最優先しているためである。 翻刻作業の経緯の中で新たに判明した語法・語彙・音韻上の問題について研究論文として単著の中で発表している。研究論文の領域は、本文の確定の基礎作業が終了した後に網羅的に行う予定なので当該年度はこの成果に止まる。
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今後の研究の推進方策 |
研究補助員を導入して、組織的に人情本資料の全文活字化作業を行う。今年度に活字化する資料は『春色江戸紫』(1864年)・『花暦封じ文』(1866年)・『鶯塚千代初声』(1869年)などである。その成果を大学院紀要その他に公表する。現代東京語成立史の観点から、語法・語彙・音韻上の問題について人情本資料を中心に検討し、その研究成果を公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下の理由のために研究費を使用する。研究補助員の活字化作業に係る謝金。研究活動のための図書・資料購入。研究活動のための用品購入。資料調査および学会参加のための旅費。
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