研究課題/領域番号 |
23520558
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
浅川 哲也 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (50433173)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 人情本 / 山々亭有人 / 松亭金水 / 鶯塚千代廼初聲 / 春色玉襷 / です |
研究実績の概要 |
江戸時代末期人情本資料のひとつである『鶯塚千代廼初聲』初編~四編(松亭金水・山々亭有人作、安政3年・1856年~明治2年・1869年刊)の全文を刊本に基づいて正確に活字化した。『新國學』復刊第6号(2014年11月)において、『鶯塚千代廼初聲』の全文を公刊した。これは同資料の初めての正確な全文活字化である。 『春色玉襷』初編~三編(山々亭有人作、明治元年・1868年~明治2年・1869年刊)の全文を刊本に基づいて正確に活字化した。『都大論究』503号(2015年3月)において『春色玉襷』の全文を公刊した。『春色玉襷』は、保存状態の良い刊本が少なく、刊本を底本とした正確な活字化資料がこれまでになかったことから、本研究における全文活字化の完成は今後の語学・文学研究の分野において広く益するところとなった。 学術論文(単著)「江戸時代末期人情本の活字化資料にみられる諸問題─「あるのです」は「あるです」─」(『日本語研究』第34号、2014年6月)を公刊した。これは、これまでの江戸時代末期人情本の全文活字化作業の過程で判明した従来の活字化本の誤謬を分類したものである。またそれらの誤謬によって、活用語に直接接続する「です」の用例などの重要な言語資料が隠蔽されていたことをこの論文において初めて明らかにした。 また、人情本にある後期江戸語の音韻資料と比較するために、ロシアの日本語資料にある江戸時代仙台方言の音韻について調査し、これを「ニコライ・レザノフ著『日本語理解の手引き』にあるキリル文字で表記された日本語の特徴について」という題目で口頭発表した(日本語学会2014年度秋季大会:北海道大学、2014年10月)。この口頭発表に基づいて、学術論文「ニコライ・レザノフ『日本語理解の手引き』にあるキリル文字で表記された日本語の特徴について」(『近代語研究 第十八集』武蔵野書院)を公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度内に、『鶯塚千代廼初聲』と『春色玉襷』の二編の江戸時代末期人情本の全文活字化を当初の予定どおりに完成させることができたため。また、前年度における学会研究発表の成果を、学術論文として公刊することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究活動により、山々亭有人作の江戸時代末期人情本の全文翻刻作業が終了した。今後は、比較資料として有人の人情本執筆時期に先行する人情本戯作者である曲山人・松亭金水の人情本の翻刻作業を行う。また、江戸時代末期人情本における音韻・語法についての調査結果をまとめる。
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