本研究は、為永春水が江戸幕府に処罰された天保13年(1842年)から明治初年(1868年)に至るまでの約30年間に版行された春水以降の人情本を「江戸時代末期人情本」と位置づけ、その主要な7作品の全文の正確なテキスト化作業を行い、その成果を公刊したものである。その過程で、江戸時代末期人情本のこれまでの活字化資料が学術的な調査に耐えられる正確な活字テキストではないことを明らかにした。また、江戸時代末期人情本として最も著名な『春色恋廼染分解』の語彙コーパスを作成しこれを公刊した。 この基礎的な研究を通じて、後期江戸語から現代東京語にかけての口語の運用の実態について語法・語彙の観点から明らかにした。
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