研究課題/領域番号 |
23520559
|
研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
福沢 将樹 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (30336664)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | アスペクト / 補助動詞 / ヌ / 韻文 |
研究概要 |
『万葉集』の助動詞「ヌ」および補助動詞「来」「行く」のうち、時間的推移を表す用例を収集して意味・用法の比較を試みた。『三十六人集』はそのうち『伊勢集』『能宣集』の注釈書を利用した。その過程で、中古韻文の「ヌ」および補助動詞「来」「行く」と、上代韻文の「ヌ」補助動詞「来」「行く」との間には、用例数や用法の偏りが見られることがわかった。そこで中近世や近現代の韻文資料も見ておく必要が感じられた。そこでまず現代の韻文を調べることとし、一般の詩歌と歌謡曲資料を用いた。その結果、詩歌に比して、歌謡曲歌詞の方が「ていく(てゆく)」がふんだんに用いられていることがわかった。また歌謡曲の中でも文体差や時代の推移に注意しなければならないことがわかった。 従来現代語の国語資料として、小説や新聞がよく用いられ、或いは戯曲・台本の台詞が用いられることが多かったが、詩歌など韻文資料は稀であり、更に歌謡曲資料は更に冷遇されてきた。せいぜい位相語・役割語の資料に用いられるくらいであっただろう。しかし文法上の研究でも独特の価値があることがわかり、今後の国語史研究に対して新たな視点を提供することができることになった。 理論的研究としては、井島正博『中古語過去・完了表現の研究』を熟読し、以下の問題点が窺えた。(1)ヌ・ツの諸用法が網羅されていないこと(2)「物語時」「表現時」の2区分が不十分なこと、そして(3)助動詞と補助動詞の分担関係に目配りされていないこと。また、散文と韻文の差は少なくないと考えられ、韻文の分析もこれら先行研究史に組み入れる必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
『源氏物語』の用例の分析は、ほとんど進展しなかった。『三十六人集』の用例の収集も、当初見込んだスケジュールを満たすものではなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初は中古語に限定して問題を考えていたが、それにとどまらない重要な問題が現代歌謡曲資料に存在することがわかったため、今後は『三十六人集』の用例と、現代歌謡曲の用例の比較対照に軸足を移すことになる。そこから中古の韻文・散文全体の体系の考察へと、フィードバックすることとなる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
中古散文の資料として、源氏物語古写本の影印本を可能な限り購入し、調査研究旅費にも多く使用する予定である。
|