本研究では、後の近代西洋化の中で埋没した感の強い、五十音図を絶対視しつつ、そこから活用論や語源論を展開させた「音義派」と呼ばれる言語論を展開した、幕末期国学者の言語研究に関連して、特に平田派国学者(平田篤胤門人)の言語研究に関する文献学的史料調査、地方(伊勢等)・江戸派国学者の言語研究に関する文献学的史料調査、幕末期音義派国学者の言語研究に関するデータベース作成、幕末期音義派国学者の日本語学史的検討、の4点について、経年的かつ継続的に実施した。 本年度は、最終年度として音義言霊派言語論の意味についての言語思想史的に考察し、その結果を単著(2013)に反映させた。具体的には、明治期では本居豊頴や物集高見といった穏当な実証的な研究者が重用された背景として、維新期に顕著であった平田派国学(研究)の隆盛に対する批判という面が存在したことが挙げられるが、その内実として幕末期に極めて隆盛を誇った音義言霊派言語論であることが示された。また、明治以降も堀秀成などの言霊学者の説が注目されることはあったものの、決して国語学の主流とはなりえなかった点について、近代国語学の成立の観点から考察を行った。
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