研究課題/領域番号 |
23520565
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
屋名池 誠 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (00182361)
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キーワード | 動詞 / 形容詞 / 活用 / アクセント活用 / 活用の系譜 / アクセント活用の系譜 / 東西アクセント |
研究概要 |
本年度は、1.高知県土佐山田町 2.静岡県浜松市北区三ヶ日町 3.岡山県笠岡市真鍋島 4.香川県仲多度郡多度津町高見島 で方言臨地調査をおこなった。うち、1・2は昨年度調査を予定・準備していながら、インフォーマントとの調整に手間取り調査を延期していたものである。 1は、京阪アクセント体系のうち、特に古態を残すとされる方言のおこなわれている地域であり、京阪アクセント体系におけるアクセント活用の系譜をたどるうえで重要な地域であるが、今回初めてアクセント活用の精密な記述をおこなうことができた。 他の諸方言では動詞や形容詞のアクセントは、語の長さにかかわらず、語末から数えて一定の位置に出現するのに対し、2は、語頭から計数してアクセントの位置が定まるという、きわめて特異な特徴を有する方言の地域であることが予備調査から予想されていたが、今回の調査でその点を精密に記述し、実証することができた。当該地域のアクセント活用のありかたは、日本語のアクセント活用の系譜を考えるとき、逸することのできないものである。 3は、日本のなかでも備讃諸島の一部にしか分布していない「真鍋式アクセント」の地域であり、4はその亜種がおこなわれている地域である。京阪式アクセント体系や東京式アクセント体系のような主流諸方言とはことなる体系でのアクセント活用のありかたを今回はじめて精密に記述することができ、主流方言とは異なる方向へ分岐したアクセント活用のあり方を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度準備していながら実施できなかった土佐山田・三ヶ日の調査を、今年度は予定通りおこなうことができ、昨年度までの遅れをほぼ回復することができた。 昨年度の報告書で今年度の実施予定としていた壱岐の調査は、インフォーマントの体調不良のため次年度に延期せざるをえなかったが、その代わり真鍋島・高見島の調査を前倒しでおこなうことができたので、研究計画全体としては大きな齟齬はなく順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施を見送った壱岐の調査を夏期休暇を利用しておこなう。そのほか、佐渡、奥能登、出雲、茨城北部のうち、2、3地点についても調査をおこなう予定である。琉球諸島についての予備的調査もおこなうべく、準備を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は、 ①夏期季休暇中には、東日本大震災に関連して繰り越し使用が認められた平成22年度までの基盤研究(C)「日本語動詞・形容詞の活用・アクセント活用の記述方法の研究」のの方言臨地調査を優先し、本研究の臨地調査の時間を確保することができなかったため、 ②春期休暇中には、話者との調整に手間取り、予定していた調査を先送りせざるをえなかったため、 予算執行に残額を生じた。本年度の調査で研究計画はほぼ遅れを取り戻すことができたが、未だ残額を残している。しかし、次年度には当初の研究計画を達成するため、方言臨地調査を時間の許す限りおこなっう予定であり、そのための旅費として使用するとともに、研究成果の取りまとめをおこなう際に必要な参考文献の購入のため物品費としても使用する。
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