研究課題/領域番号 |
23520566
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
土井 光祐 駒澤大学, 文学部, 教授 (20260391)
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キーワード | 中世語 / 鎌倉時代語 / 明恵 / 法談聞書類 / 高山寺 / 解脱門義聴集記 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、明恵上人高弁(1173~1232)関係の法談聞書類である金沢文庫蔵「解脱門義聴集記」の文脈付きの語彙索引、漢字索引の作成作業を継続させると共に、関係古典籍の原本調査を実施し、概ね次のような成果を得た。 (1)漢字索引は、「解脱門義聴集記」のどの文章構成要素中の使用例かという情報を含むデータベース化がほぼ完成しており、字音形の基準、字体の包摂規準の統一に関する調整を進めている。 (2)語彙索引は、片仮名交じり文を主体とする聞書部分のデータベース化が進行中であり、併せて漢文体の引用典籍部分の処理方法についても検討中である。 (3)本データベースの作成過程において、「明恵語」とでもいうべき独特の表現の存在が確認されつつあり、関連資料や同時代他資料との網羅的な比較作業の必要性と有効性とが示唆された。 (4)一方で、「解脱門義聴集記」には平安時代の漢文訓読文に共通する、いわゆる文語調の表現が多数存在している。「解脱門義聴集記」は法談聞書類であると共に、典型的な仏書注釈書であって、必然的に「注釈文体」を基調とする中で明恵の口頭言語を混在させた特異な文体的特質を有するに至ったものと推定される。データベースの構築によって口語性、文語性の両極の特質をより具体的に明示し得る可能性が見えてきた。 (5)高山寺を中心に所蔵される他の明恵関係法談聞書類及び関連資料の原本調査を実施して、明恵とのその周辺の言語生活の実態を確認すると共に、言語比較のための資料とすべく分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベース作成上の課題であった漢字の処理方法について、一定の目処がついてきたので、このまま作業を進捗させた上で調整をはかる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)現状の方針に基づいてデータベースの完成度を高めると共に、相補的に「解脱門義聴集記」の本文校訂の適否を検証していく。 (2)形態素認定の不統一を修正しながら、内部構成要素との関係をデータベースに反映させて、文体と伴う言語意識との関係について分析する。 (3)高山寺を中心とする関係資料の原本調査を実施して、法談聞書類の資料的性格をより詳細に検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
原本所蔵機関との間で日程が合致しなかったために調査出張を延期したこと、データベース構築のために一部専門業者に外注予定であったが、準備作業が不十分であったために延期したこと、資料整理・データ入力のためにアルバイタを雇用予定であったが、準備作業がやや遅れていたため、次年度以降に実施した方が適当と判断したこと、等が主な理由である。 昨年度予定していた原本調査は今年度に実施する予定であり、また外注予定の作業、アルバイタ雇用も今年度に実施する予定にしている。
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