本研究は、「解脱門義聴集記」を対象とする大規模なデータベースを構築し、その言語的性格を解明することを企図したものである。本資料の内部構造は極めて複雑であり、本文の解読、漢字字体と漢字音の処理、他典籍からの引用部分(漢文)の総索引化の方法等に課題が残っているが、本データベースの構築により、鎌倉時代の聞書類の総合的な記述的研究が可能となりつつある。 本資料は、明恵の口頭言語を記録するために生じた書記言語の規範の弛緩と、鎌倉時代の仏書の注釈書が一般的に持つ古代語以来の書記言語規範の束縛という、二つの性格を複雑に混在させた、独特の文体的性格を有していることがより明確となった。
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