この研究は,方言を含む今日の日本語がどのような歴史的経緯を経て成立したかを研究したものである。今日の模様は主に『方言文法全国地図』(国立国語研究所編)により,これを各地の過去の方言文献と比較対照し,その史的変化を推測した。取り上げた事項は,意志・推量表現,格助詞(準体助詞)ノ・ガ,接続助詞(条件表現),敬語について二人称代名詞と尊敬語述部形式などである。方言文献は近世の戯作類・説経資料,漂流民の残した資料などで,山形庄内・新潟・江戸・上方・佐賀,熊本,鹿児島のものにつき考察し,地図と比較した。そして各事項ごとの分布模様をまとめる,方言伝播の類型,また中央語史の時期との対応を考えた。
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