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2012 年度 実施状況報告書

平安鎌倉時代における仏教漢文書記史の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520571
研究機関福山大学

研究代表者

磯貝 淳一  福山大学, 人間文化学部, 准教授 (40390257)

キーワード日本語史 / 仏教漢文 / 和化漢文 / 書記史 / 用字法
研究概要

1.前年度に調査を行った資料(京都・高山寺所蔵の覚鑁撰「心月輪秘釈」「密厳浄土略観」、済暹撰「顕密差別問答」)の電子データ化・データベースの構築を進め、本文の整備及び使用漢字に対する情報の付加を行った。
2.仏家撰述にかかる和化漢文の文体特徴解明の一環として、醍醐寺蔵『探要法花験記』を取り上げて用字に関する基礎的な研究を行った。当該資料は日本・中国二者の出典を承けて成立しており、その出典からの影響について用語・用字の基盤創出の観点から検証を加えた。計量的な概観及び動詞の用字について、大きな差異は認められず、出典を異にしていても本資料内部の言語事象は類似性を有するものであることが分かった。更に、「いはく」の用字の継承・改変の様相に着目し、本資料成立に際しては日本・中国両出典の用字を本資料独自のものに統一しようとする態度・志向性が存在する可能性を指摘した。
3.本研究の目的である仏教漢文の日本語書記史における位置づけを行うために、比較対象となる俗家の手になる資料に関しても、文章形成と文章構造との関連性の観点から考察を行った。関白藤原師通(1062~1099)の日記『後二條師通記』の同一資料内部に見られる文体差(「本記」「別記」の違い)について、先行研究では語彙の性格の違いや和文的・漢文的という文体範疇の観点から分析が行われてきた(柳原2007)。これを受けて本考察では、同一日の同一の出来事を記すその言語の違いとして、「中心的出来事による一日のラベリング」「一人称〈われ(予・余)〉の存在」(以上本記)、「時系列による記録」「因果関係を示さない接続詞の使用」(以上別記)に両者の性格を特徴づける意味が認められることを指摘した。これら「本記」「別記」の文体差は、草稿-浄書の文章形成段階の反映として説明されてきており、和化漢文資料内部の文体差・範疇化を考える上で有効な指標となると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度は計2回の文献調査(京都・高山寺所蔵の覚鑁撰「心月輪秘釈」「密厳浄土略観」、済暹撰「顕密差別問答」の原本調査、及び関連資料の書誌調査)を行いつつ、資料のデータベース化(訓読文の作成・用字法の確定・データへの情報付加)を平行して進めた。
今年度は研究機関の異動が生じたため、データベースの構築に若干の遅れがある。但し、現段階においては、これまでの調査結果に基づき、使用漢字の量的構造の把握と指標的漢字の抽出と用字法の実態把握を進めており、当該資料の漢字使用の実態を概観することが可能となっている。今後、漢字使用に基づく文体特徴を明らかにする上での指標を得ることもできた。これらの点から、目的の達成度について一定の成果が得られたと考える。

今後の研究の推進方策

本研究は、日本撰述の仏教漢文の発掘・翻字データの作成を行い、当該ジャンル資料の日本語書記史における位置づけを探ろうとするものである。特に、これまで日本語学の研究対象とされることの少なかった仏教記録類を仏家の書記活動の一つに位置づけ、当該期
における仏家の書記の実態を総合的に明らかにすることを目指している。
このためには相当量の文献の発掘及び調査が必要となる。研究最終年度となる次年度は、本研究課題のまとめと、その後の研究に繋がる基盤整備の期間と位置づけ、以下の三点を中心とした研究を推進する。①これまでに調査が終了した資料に関する漢字使用の実態把握。②和化漢文資料における仏教漢文書記の位置づけの解明。③仏家の書記生活に関わる文章ジャンルの総合的調査に向けた資料の選定及び調査。

次年度の研究費の使用計画

今年度は研究機関の異動が生じたため、年度末に実施予定の文献調査(京都・高山寺)及びそのデータ整備に関わる研究費が未使用となった。次年度は当該の調査研究を当初計画に加えて実施する。また各地寺院、図書館等において補助的な調査も行う。これらの原本調査が直接にかなわない場合、複写資料の購入を行い研究調査対象資料の拡充に努めてより広い範囲における仏教漢文の言語事象の記述と整理を行う。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 醍醐寺蔵『探要法花験記』日本・中国両部の比較-和化漢文用字法の共通基盤解明に向けて-2012

    • 著者名/発表者名
      磯貝淳一
    • 雑誌名

      国文学攷

      巻: 215 ページ: 21-32

    • DOI

      http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00033822

    • 査読あり
  • [学会発表] 日本語書記史の観点からみた『竹取物語』教材化の可能性

    • 著者名/発表者名
      磯貝淳一
    • 学会等名
      日本教材学会
    • 発表場所
      福山大学社会連携推進研究センター
  • [学会発表] 『後二條師通記』本記・別記の文体差について-接続表現からみた文章構造の比較-

    • 著者名/発表者名
      磯貝淳一
    • 学会等名
      新潟県ことばの会平成24年度研究集会
    • 発表場所
      新潟大学

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公開日: 2014-07-24  

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