研究課題/領域番号 |
23520573
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
上田 雅信 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (30133797)
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研究分担者 |
藤田 耕司 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (00173427)
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キーワード | メカニズム / 生物学の哲学 / 統合問題 / Merge / 言語進化 / 単一起源の誤謬 |
研究概要 |
研究代表者は、生物学の哲学と呼ばれている分野において、生物科学・心理学におけるメカニズムの概念的な研究が行われており、そこでは、因果律が重要な問題として議論されていることと生物言語学のメカニズムに因果律が含まれていないという問題との間に類縁性があることを科学史・科学哲学の観点から明らかにした。生物学の哲学の展望の中に位置づけて、ミニマリスト・プログラムのメカニズムの概念を、他の生物科学の分野の理論におけるメカニズムの概念との比較を通して、分析することが生物言語学の哲学的・概念的特質を明らかにするうえで有益であり、この概念的な分析が生物言語学と他の分野との統合を推進する際に重要な役割を果たすことが期待できるという結論を得た。また研究分担者は、ミニマリスト・プログラムに基づく生物言語学と他の生物科学の間の相互理解を推進して両者を整合的に架橋するために、両者間に見られる見解の相違が言語やその起源・進化に関するいくつかの誤謬に由来するものであることを指摘した。これには前年度においてすでに明らかにした「連続性の誤謬」に加え、「単一起源の誤謬」「思考の誤謬」「コミュニケーションの誤謬」等が含まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生物言語学における残された問題である統合問題への様々なアプローチを評価し、科学史・科学哲学的に位置付けるための基礎となる生物言語学のメカニズムの概念の哲学的・概念的分析が進み、他の生物科学のメカニズムとの概念的比較の枠組みが整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
生物学の哲学におけるメカニズムの研究を枠組みとして用いて、生物言語学のメカニズムと他の生物科学のメカニズムの概念の比較と分析を進めるのと同時に、生物言語学の理論の形成過程を生物学の哲学及び科学史・科学哲学の観点から明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
生物言語学は、説明概念として因果律を含まないという点で行動生物学とは性質が異なることが明らかになった。さらにこの相違はミニマリスト・プログラムの統合問題と深い関わりがあることが解り、期間を延長してこの相違の性質を明確にした上で生物言語学と他の生物科学の分野とがどのように統合されてゆくかを解明することが必要になった。 生物言語学、鳥の歌の研究、チンパンジーの行動の研究、生物学の哲学の研究者による行動のメカニズムの性質やその違いについてのワークショップを科学哲学会で行う。そのための費用および学会発表の準備、学会参加などに関わる諸費用として使用する。
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