研究概要 |
2011年度は、まず古英語から中英語への統語的継続を確認するため、古英語の主要作品(Cura Pastoralis, Orosius, Boethius, Gregory's Dialogues, Blickling Homilies, Aelfric's Catholic Homilies, Lives of Saints, Hexatuech, West Saxon Gospels, Wulfstan's Homilies, Anglo-Saxon Chronicle) を読み、古英語的特徴を持つ構文とあとの時代につながる構文とを検証した。その際 Orosius と Chronicle C を含む写本に多く見られる beon/wesan + 現在分詞を中心とした迂言用法につき再確認を行って、古英語の時制体系をもう一度調査し直すことに決めた。現在は過渡期にあたる Lambeth Homilies, Trinity Homilies, Ormulum, Layamon's Brut を中心に資料を取っている。学会関連では、7月にロンドン大学で開催された第2回ロシアとイギリスの言語・文化・社会に関する国際会議で発表、すでに論文は印刷中である。8月には大阪大学で中英語・現代英語コーパス学会国際会議に招待され発表、この論旨はさらに2012年度の英語史学会で発展させる予定である。12月には日本中世英語英文学会全国大会(大東文化大学)で恒例の会長講演を行った。その内容は現在出版計画中の中世感情表現に関するものである。また古英詩の分析に関する研鑽を深めるべくハーバード大学の Daniel Donoghue 教授を招聘、彼の専門である古英語の韻律法と分析方法について講演してもらうと共に議論を重ねた。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は過渡期から中英語期にかけての資料を充実させる。AB Language の各作品をはじめ Owl & Nightingale, Genesis & Exodus, Cursor Mundiなどを加え、方言による相違と詩と散文による相違を明確にすると共に、ジャンルによる違いも見るため,今回は Paston Lettrs のような書簡集や Mandeville's Travels 等も含めて、Chaucer, Gower, Malory まで網羅したい。学会関連では、まず6月に日本中世英語英文学会東支部(信州大学)で講演を頼まれており、9月には私が主催する英語史学会の国際大会(慶應義塾大学)でシンポジウムを計画している。その直前にスイスで開催の国際歴史英語学会に参加し、写本研究家達と意見交換を行う。12月にはドイツ、ミュンヘン大学とヴュルツブルグ大学を訪問、講演することになっている。このようにして、新しい英語統語論の見方を国内外にアピールする予定である。
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