研究課題/領域番号 |
23520578
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小倉 美知子 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (20128622)
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キーワード | 古英語 / 中英語 / 統語論 / 文献学 / 英語史 |
研究概要 |
平成24年度はまず、日本中世英語英文学会東支部において、迂言用法が英語の発達においていかに重要な役割を果たしたかを証明すべく、受動態、完了形、進行形、法助動詞、迂言のdo、その他古英語期に特徴的であった 'gewitan + infinitive', 'uton + infinitive','onginnan/beginnan + (to-)infinitive',ラテン語からのcalqueとされる'nelle thu/naellath ge + infinitive'構文など、単一形の使用と同時に迂言形がかなりの割合で用いられていた様子、また作品によってその様々な形の頻度が違うことが、作品の文体的特徴になっていたことを例証した会長講演を行った。さらに9月には自身の主催する英語史学会を開催、その中ではシンポジウムの形で、古英語におけるambiguityを取り上げ、形の曖昧さのみならず、文脈の理解を妨げるような語彙・語句・関係節等の曖昧さを指摘した。これらの発表は近々論文として公表する。さらに12月には、ミュンヘン大学での博士論文審査の際、ヴュルツブルグ大学でやはり迂言用法に関する講演を行った。 8月末には国際歴史英語学会の行われたスイスでチューリッヒ、ベルン、ルツエルンを訪問、昔からの友人である中世英語、古ノルド語の専門家と再会して、2013年7月の国際英語正教授学会の中世シンポジウムについての打ち合わせを行った。また1月には、近代英語協会30周年記念大会のシンポジウムの打ち合わせも行い、これらのシンポジアを通じて研究の成果を発表していくこととなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、古英語・中英語の作品から必要な資料を取り、辞書類も最近の電子コーパスにも目を通して、写本・ファクシミリを中心としてきた純粋な文献学に加え、コーパス言語学的アプローチも批判的に用いるなど、現代に通ずる中世研究をアピールできるような努力もしている。論文発表を重ねながら、最終的には一冊の本の形に仕上げるつもりである。これまでとは違った視点からの中世英語統語論が書ければと願っている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは近代英語協会の30周年記念シンポジウムにおいて、通時的英語シソーラスであるHTOED の英語史研究への正しい使用方法を訴える形で、古英語・中英語の類義語辞典を用いて語彙から文体への研究の仕方を問いかけたい。また国際英語正教授学会では、中世シンポジウムで古英語における現在分詞の用法について発表し、英語史のセッションで統語法について発表する。さらに国際アングロサクソン学会に出席し、20年来の友人達と英語史の研究法について議論することになっている。2013年度が完成年度となるため、できるだけ具体的な「英語史観」を示せるようなまとめ方にしたいので、写本研究家と言語理論家の双方と議論したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
2度の海外出張と3度の国内出張において研究発表、資料収集、研究打合せ等を行うので、そこに研究費を使用したい。また、国内外の資料の複写等も行う必要がある。書籍と共に電子コーパスを用いる必要性があるため、その subscription の費用も必要となる。書籍については当然、大学の図書館に無いもののみ、入手しておく。特にファクシミリやマイクロフィルムは、手元に置いて常に刊本と見比べる必要がある。
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