研究概要 |
3年継続の研究の最終3年目である本年度の研究では、次の3点で大きな進展を見せた。本研究の中心論点は、認知モードの展開、とりわけIモードからDモードへの展開が言語とコミュニケーション進化に対して決定的な認知的要因であるという点であるが、進展の①第1点目は、本研究を取り巻く研究群の総括として、2つの認知モードが、認知科学で注目されている認知の二重過程仮説をもとらえるものであることが判明した点である。IモードからDモードへの展開を導入しているため、ヒトの個体発生的、系統発生的進化を捉えることが可能な点でも、本研究は優れている。進展の②第2点目は、認知モード、とりわけIモードの内部が詳細に見えてきたことである。Iモードでは、単純に概念が未分化でカオス状態であるのではなく、認知言語学で注目されるイメージ・スキーマや基本レヴェルカテゴリがアトラクタとして創発していることも判明してきた。そのイメージやカテゴリを基盤に、一部Dモードで具体性の高い表象が構築される。進展の③第3点目は、言語の中心的特性とされる再帰性だけでなく、ヒトのコミュニケーションを支える他利性をも、認知モードが捉えるであろうという予測が立った点である。最後の点は、26年度~29年度にかけての次回科研研究の一部として、詳細に検討されるはずである。以上の点に関する成果は、以下の通り刊行され、講演、研究発表で公開された。「Langacker認知構図と認知モード」(2013、『日本英文学会第85回大会Proceedings』)、Modes of cognition and cognitive linguistic typology(The 12th International Cognitive Linguistics Conference, University of Alberta, Canada)
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