本研究の成果は次の4点に集約できる。一、北欧語語彙の借入の「揺れ」の状態を、カンブリア地方の地名に明確に確認できたこと。二、カンブリアのブライドカーク教区教会に現存する洗礼槽に刻まれたルーン碑文の未読二文字に新たな解読を行えたこと。三、12~14世紀にかけてノルウェー語が屈折語尾を保持する一方で、母音や子音に音変化が見られるが、その中世ノルウェー語と比較することで、カンブリア方言の北欧語からの借入語の語幹母音の変化の過程をより明確に確認できたこと。四、日本人英語教育者のために、北欧語話者と中世英語話者の言語接触の歴史的過程について新たな記述と理解の必要性を説いたことである。
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