研究課題/領域番号 |
23520582
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大森 文子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (70213866)
|
研究分担者 |
渡辺 秀樹 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (30191787)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
キーワード | 認知 / 感情 / 概念メタファー / コーパス / 詩学 / 辞書 / 慣用表現 / 翻訳 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、Metaphor of Emotions in English と題する書籍をひつじ書房から刊行した。序章、第1章から第6章、終章の計8章から成る218ページの研究書で、平成24年度に博士(文学)の学位取得申請のため大阪大学大学院文学研究科に提出した論文に加筆修正を施したものである。感情を理解するための概念メタファーの構造と写像の仕組を、大規模コーパスや文学作品、辞書などに記載された表現例を対象として探究した。また本年度は、Miltonの叙事詩的比喩における概念メタファー構造について研究した論文が掲載された書籍『言葉のしんそう(深層・真相)』(英宝社)が刊行された。さらに、19世紀英国動物寓意詩The Jackdaw at Home を認知メタファー論の観点から分析した研究結果を大阪大学大学院言語文化研究科が発行する共同研究プロジェクト報告書に発表した。また、認知詩学による英詩分析をテーマに、本研究科で開催している言語文化レトリック研究会で2回発表した。特に2回目(平成27年3月18日)は「認知詩学の試み」と題する特別セッションで、研究代表者(大森文子)、研究分担者(渡辺秀樹)、および両名が共通に指導する院生2名、計4名が発表し、熊本学園大学の堀正広教授(英語コーパス学会会長)がコメンテーターを務めた。本発表の内容を「認知詩学とスキーマ」と題する論文にまとめた。加えて、本研究課題の研究方法に多大な示唆を与えたHans Lindquist著のコーパス言語学の学術書の翻訳を、研究分担者を中心とした4名のメンバーで完了した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度に刊行した書籍Metaphor of Emotions in English は、研究代表者が平成19年度から22年度に助成を受けた科学研究費補助金による研究および平成23年度より助成されている本研究課題において一貫して取り組んできた、従来の認知メタファー論研究が主として用いてきた内省に基づく直観的分析ではなくコーパス・文学作品・辞書などの実際の生データを分析するという方法論の妥当性を実証することができた。本書はその意味でこの8年間の研究のひとつの集大成と位置づけることができる。さらに今年度は、本書に著した研究の一部を認知詩学研究に発展させる可能性を確認することができた。また、Lindquist著のCorpus Linguistics and the Description of English (Edinburgh University Press, 2009) の共同翻訳の原稿を完成させ、大修館書店による出版準備の段階に到達した。しかし、上記の書籍の刊行の準備に予想外の時間がかかり、動物媒体を用いた感情メタファーのコーパスデータの分析作業が計画通りに進まなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、研究代表者(大森)と研究分担者(渡辺)のこれまでのデータ分析・考察結果をふまえ、可能な限りさらなるデータを追加し、両者の共同研究を整理、統合し、動物の概念領域に由来するメタファー研究結果を学術書として出版するための最終準備を行う。特に、大規模コーパスによる動物を根源領域とする感情メタファーの慣用表現については、昨年度予定していた調査がまだ完了していないので、今年度重点的に収集分析作業を行う。加えて、Lindquist著のコーパス言語学学術書の翻訳を今年度秋に刊行すべく、最終準備を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度で動物媒体を用いた感情メタファー表現についてのデータ収集・分析を完了し、研究成果を発表し、またLindquist著のコーパス言語学の翻訳書も刊行する予定であったが、研究代表者の単著の英語研究書(Metaphor of Emotions in English)が、出版社の印刷スケジュールがずれたことと、校正時の最終修正や索引作成に予想外の手間がかかったことにより、計画していた研究の時間が大幅に削られ、未使用額が発生したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
感情メタファーの文学データの追加収集のため、英米詩人の作品全集を購入したい。また、 コーパス言語学翻訳書刊行の最終準備のため、共同研究グループメンバーが所属する愛知教育大学への出張2回、および学会発表・資料収集のため、東京への出張2回に充てたい。
|