予定研究期間を1年延長した平成27年度には、過去4年間の調査研究で解明した動物名の比喩義の構造性を実際の文学作品で確認すべく、 "The Council of Dogs"という19世紀初頭の寓意詩を対象とし、英語本文の校訂から注釈、比喩義一覧、日本語訳を代表者が担当、それを基に本作品のメタファーの構造的使用を分担者が論じ、30ページの和文論文に纏めて、犬の品種名が上下関係、対立関係、類義関係のネットワークをなして人間社会を構造的に写しているさまを証明した。 過去4年間に行った英語昆虫名、鳥名、哺乳類名、魚介類名が構造的に用いられた寓意詩の本文校訂・日本語訳・メタファー分析に加えて、犬科内部の品種名にさえも並行する構造性が存在することが明らかとなった。大きなコーパスを利用した構造性の一般的研究と、その仮説を実際の文学作品の分析を通して証明するという複合的な研究はこれまで例が見られないので、この5年間の研究成果をまとめる2種類の研究書を刊行することを計画している。 また、本研究の一部をなす古英詩のメタファー研究の成果が認められて、2014年に国際英語正教授連盟 (IAUPE) の会員に推挙されて、2016年度に英国で研究発表を2件行うことになった。同様に2016年度からは日本中世英語英文学会の評議員に再任された。また研究代表者と分担者を含む4人の研究グループで『英語コーパスを活用した言語研究』(大修館)という翻訳書を刊行したが、原著には第4‐5章定型表現・イディオムの研究、第6章メタファー研究が含まれており、これらの章を担当した代表者と分担者の翻訳活動が、英語動物名メタファーの収集分析に実際に役立った。
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