研究課題/領域番号 |
23520584
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
松本 マスミ 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10209653)
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研究分担者 |
長谷川 ユリ 大阪教育大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90273747)
西光 義弘 神戸大学, その他の研究科, 名誉教授 (10031361)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 中間構文 / 生成文法 / 日・英自他交替 / 外国語教育 / 日本語教育 / 誤答分析 / 誤文訂正 / 他動詞構文 |
研究概要 |
今年度は初年度であるため、本研究の方向性を確認し、3年間の基盤となる研究を行った。全体的な活動として、本研究のウェブサイトを立ち上げ、本研究の目的と内容について、広く社会に発信した。また、毎月約1回の研究打合せでは、日英対照研究と英語教育、日本語教育の現状について情報交換を行い、英語教育と日本語教育における学生の反応と、日英対照研究が相互に活用できることを確認した。さらに、平成23年度の本研究のまとめとして、平成24年2月に西光を講師として第1回橋渡しことばの会による英語教育講演会を開催した。高校英語教員を含む参加者との意見交換により研究成果をフィードバックできた。また、平成24年3月には、松本が編者の1人であり、松本と西光の論考を含む計42篇の論文集「最新言語理論を英語教育に活用する」が出版された。 松本は、個体述語としての中間構文と日本語の「られる」のモダリティ解釈の統合的分析の基盤となる研究を行った。アメリカ言語学会年次大会では、心理動詞における名詞句の組み合わせ方を中間構文の研究に活用するヒントを得ることができた。英語教育では、中間構文と無生物主語構文の違いを指導する際に、中間構文における名詞句の移動という生成文法の考えを用いることを提案した。 長谷川は、ロンドン大学SOASで日本語教育を中心に、資料収集を行った。また、大学の日本語の授業において、英語母語話者の学生を中心とした学習者の誤用についての観察を行った。 西光の研究では、日本語と英語の自動詞・他動詞および受身について日本人英語学習者の誤用と英語話者日本語学習者の誤用を並べてみると鏡像関係になることがわかり、それに基づき、誤文訂正4段階モデルを創案し、そのモデルに基づく練習問題を作成した。今後はそれをさらに精密化してゆき、他の現象にも広げて行き、誤文訂正4段階モデルを改訂して行く基盤をつくることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究が当初計画以上に進展していると判断する理由は以下の通りである。 第1の理由として、本研究のウェブサイトの立ち上げ、英語教育講演会、論文集出版と、プロジェクトに関して学会・社会への発信を行い、各方面からのフィードバックと反響を得ることができたことがあげられる。初年度で、これだけの成果が発表できるとは予定していなかった。 第2の理由として、わが国を代表する対照言語学研究者である西光名誉教授を研究分担者としてお迎えし、日本人英語学習者と英語話者日本語学習者の誤用の鏡像関係をプロジェクトのテーマの一つとして加えると共に、研究全体への助言をいただき、毎月の研究打合せがよりレベルの高いものとなった。 第3の理由として、代表者松本と分担者長谷川の研究も順調に進んでいる。松本は、中間構文を個体述語として分析する際に統語論と意味論だけでなく、心理学的接近法を取り入れる可能性をさぐり、また、これまでの多重VP構造を発展させて中間構文と英語における他の関連構文との関係の統合的説明の基盤となる研究を行うことができた。長谷川は、日本語の授業において、順調にデータを収集している。さらに、SOASでは、談話、コミュニケーション、会話についての最新の知見を得ることができた。 以上から、現段階で、今年度の当初予定以上に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、次のような方策で、今後の研究を推進する。 プロジェクト全体としては、引き続き、日・英語の自他交替における「ずれ」について生成文法、英語教育学、日本語学、日本語教育学の統合的観点から、日英自他交替のネットワークモデルの構築と授業などでのフィードバックを行う。また、自他交替についての知見を得るため、反語彙主義的立場による自他交替の専門家であるAlexiadouシュツットガルト大教授を迎えてシンポジウムまたは講演会を開催する。また、本プロジェクトの主なテーマである日・英自他交替についてのワークショップまたはシンポジウムを行う。さらに、言語学・言語理論を英語教育・日本語教育に活用する講演会を開催する。 松本は、英語中間構文における総称性・法性、中間構文と他の英語構文との関係、日本語の「られる」「てある」について、多重VP構造を発展させ、統合的に説明する研究を進める。また、英語・英語学関係の授業で、それらの分析を活用してフィードバックを行う。 長谷川は、英語を母語とする学習者を中心に自動詞・他動詞の誤用、正用、非用のデータを収集し、自動詞構文・他動詞構文の使用上の特徴の分析を進める。さらに、分析の結果をもとに、日本語教育の授業においてフィードバックを行う。 西光は、日本語と英語の自動詞・他動詞および受身についての誤文訂正4段階鏡像モデルを精密化し、完成させる。また他の文法現象への応用の可能性を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究における、次年度の研究費の使用計画は次の通りである。プロジェクト全体としては、生成文法における自他交替研究についての最新知見を得て意見を交換するため、反語彙主義的立場からの自他交替の専門家であるAlexiadouシュツットガルト大学教授を含む2名を海外から招いて、シンポジウムまたは講演会を行う。そのための旅費として69万円、謝金21万円を予定している。また、言語理論を英語教育に活用する知見を得るための国内言語学者による講演会を予定しており、そのための旅費として5万円、謝金5万円を計上する。 前年度の予算の繰越額28万円のうち、20万円は、新たに加わった西光の研究費として使用し、4万円は松本の国内旅費、4万円は長谷川の旅費の不足分に使用する。 松本は、国内の学会に参加し、生成文法や自他交替についての知見を得て意見を交換するため、旅費4万円を使用予定である。 長谷川は、国内外の学会に出席し、日本語学および日本語教育に関する知見を得て意見交換を行うために、旅費34万円を使用予定である。 西光は、論文書籍を読むためにiPad(10万円)を購入し、そのなかで印刷すべきもののために両面印刷のプリンタ(20万円)を購入する。
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