研究課題/領域番号 |
23520584
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
松本 マスミ 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10209653)
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研究分担者 |
長谷川 ユリ 大阪教育大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90273747)
西光 義弘 神戸大学, その他の研究科, 名誉教授 (10031361)
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キーワード | 中間構文 / 生成文法 / 日・英自他交替 / 外国語教育 / 日本語教育 / 誤答分析 / 誤文訂正 / 他動詞構文 |
研究概要 |
今年度は、3年間の研究期間の2年目であるので、これまでの研究を引き続き進めるとともに、最終年を見据えた研究を行った。全体的な活動としては、2ヶ月に約1回の研究打ち合わせで、日英対照研究、英語教育、日本語教育、言語学・外国語教育におけるコーパスの利用などについて情報交換を行い、各メンバーの研究についても議論を行った。 また、平成25年1月に、長谷川信子神田外大教授を講師として、第2回橋渡しことばの会による英語教育講演会を開催し、小学校英語から大学英語教育にいたるまでの言語学が英語教育に果たす役割についての知見を得た。さらに、平成25年度に実施予定の中間構文についてのワークショップについて企画・準備を行った。 松本は、中間構文の特性を4つの視点から再びまとめなおし、新しい方向性を見いだす際の出発点とした。また、ラレル・テイルの分析の基本となる動詞句構造について、Travis (2010)の提案を他の研究と比較しながら考察し、日本英語学会機関誌にReviewとして掲載されることになった。また、生成文法を英文法に応用した中村(2009)を授業で用いたり、英語学の授業の受講生を対象に上記の長谷川教授の講演会についての反応を調査したりして、英語学を英語教育に応用する可能性を探った。 長谷川は、外国語としての日本語学習者の自動詞・他動詞の使い分けに関するデータを収集し、「有対他動詞」であるにもかかわらず対立する自動詞が習得できないケースについて考察した。また、日本語教育や日本語文法の授業で自動詞・他動詞の使い分けや習得について取り上げ、学習者へのフィードバックを試みた。 西光は、本科研による研究成果を日本英文学会北海道支部における招待講演において公表し、有益な意見交換を行った。日本語と英語の自動詞・他動詞・受け身文の現象的な一般化をさらに精密化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日・英語の自他交替における「ずれ」について、昨年度の研究を基盤として、順調に各自の研究を進めた。また、プロジェクトのメンバーが定期的に集まり各自の研究を報告しあうことにより、それぞれの研究の進展につなげるとともに、予定以上のこととして、西光が中心となって、コーパスの活用についての最新の知見とデータを共有することができた。また、公開講演会の開催を通じて、言語学の英語教育への応用の知見を得ることができた。 自他交替の専門家であるAlexiadouシュツットガルト大教授を迎えてワークショップを開催する予定であったが、日本英語学会の春期フォーラムの日程の関係で、次年度に開催することになった。しかし、ワークショップの内容はすでに決まっており、準備は順調に進んでいる。 松本は、計画通り、英語中間構文の意味と構造や多重VP構造の新しいモデルを検討し、中間段階として、中間構文を4つの視点からまとめた論考を発表した。また、多重VP構造の最近の代表的な研究であるTravis(2010)のモデルを中心に検討したReviewが日本英語学会機関誌に掲載されることになった。さらに、英語学の授業において、生成文法の英語学への応用や、言語学の英語教育への応用について、学生からのフィードバックを実践し調査した。 長谷川は、外国語としての日本語学習者の自動詞・他動詞の使い分けや習得に関する調査を行い、日本語教育の授業において、学習者にとって習得が困難なケースについての考察をもとにフィードバックを実施した。 西光は、日本人英語学習者の自動詞・他動詞・受け身文の誤用と英語話者日本語学習者の誤用を調査し、鏡像的な関係にあることを突き止め、誤文訂正4段階鏡像モデルとしてまとめることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本プロジェクトの最終年度であるため、これまでの2年間の研究をより精緻化し、定期的な打ち合わせにより各メンバーの研究について互いにフィードバックを行いながら、各自の研究をまとめ、その成果を発表する。同時に、言語学・英語学・英語・日本語の授業における研究成果のフィードバックを継続する。 国際ワークショップ「英語中間構文とその展開」を開催し、Alexiadouシュツットガルト大教授の講演と意見交換により英語中間構文を含む様々な態の統語的分析についての知見を得る。このワークショップには、生物言語学的見地からみた中間構文や日本語の受動文についての講演なども予定されている。さらに、この2年間毎年開催していた言語学・言語理論の英語教育・日本語教育への活用についての講演会を次年度も開催する。 松本は、中間構文と同族目的語についての研究をまとめており、その一部を上記のワークショップでも発表する予定である。また、英語・英語学の授業で、プロジェクトで行われてきた日本語と英語の自他交替についての「ずれ」についてのフィードバックを行う。 長谷川は、日本語学習者の自動詞・他動詞の使い分けに関する考察を進め、その成果をまとめる予定である。また、プロジェクトで得られた日本語と英語の「ずれ」についての知見を日本語教育の授業で応用する。 西光は、現象面をモデルとしてまとめた誤文訂正4段階鏡像モデルを説明原理を津休するために、日本語話者と英語話者の対話コミュニケーションに対する態度の違いを基本とした説明モデルを今後は完成させ、現象の一般化モデルと説明原理のモデルを対応させる目標に向かって研究を推進させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度予算の繰越額118万円のうち、94万円は、平成24年度開催予定を次年度に延期した国際ワークショップ「英語中間構文とその展開」の開催に使用予定である。残りの24万円は、長谷川が日英語対照研究、自他交替に関する研究の知見を得て意見交換をするため国際言語類型論学会に出張するのに使用予定である。 次年度交付の研究費についての使用計画については以下の通りである。プロジェクト全体としては、言語学・言語理論を英語教育に活用する知見を得るために国内の言語学者による講演会を開催し、旅費として5万円、謝金5万円を使用予定である。さらに、本プロジェクトの研究の成果をまとめるために、印刷費6万円を使用予定である。 松本は、生成文法における動詞句構造の研究における知見を得て意見交換をするため、国際言語学者会議に出張するのに、旅費32万円を使用予定である。 長谷川は、上記の国際言語類型論学会への出張の補充のために旅費22万円を使用予定である。 西光は、日本英語学会のシンポジウムにおいて講師として出張するために10万円を使用予定であり、また研究を推進するためにスキャン・スナップなどの機器を購入する予定である。
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