研究課題/領域番号 |
23520588
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研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
小林 茂之 聖学院大学, 人文学部, 准教授 (00364836)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 歴史的変化 / 英語史 / 韻律論 / 意味論 / 古英語 / 中期英語 / 散文 / 韻文 |
研究概要 |
古英語の韻文の中で時代的に古く,代表的文献資料である『ベーオウルフ』は,Russom (1987)で詳細な韻律論的分析が行われている.他方,Pintzuk & Kroch (1989)はその統語構造を韻律論的に分析し,動詞は半行の後半の最後に強勢位置に置かれ,休止の後,目的語は副詞と共に次行に置かれる.これは後置と考えられる現象である.これは,古英語の語序は韻律論に関係することを示す.ところが,Fischer et al.によれば,散文では音韻論的に重い要素でなくても,動詞に後続する用例が多数存在する.したがって,韻文における語序の規則は,やや散文では自由であるとみられている.そこで,23年度では,AElfricの説教集における語序を韻律的に分析し,目的語が後置された場合と比較し,散文を統語的に検討した.さらに,古英語の韻文における語序についてKing Alfred's Old English Version of Boethius de Consolatione Philosophiaeを調査し,重名詞句でない目的語を含む語序のデータを採取,分析し,語序の統語構造を考察した.さらに,英語史の語序変化に関してÆlfricの説教集に関する数量的分析を示したDavis (1997), 英語の格形式の変化を扱っAllen (1995),方言の文法間における競合から変化を説明するPintzuk (1999),パラメータの変化の観点から説明するLightfoot (1991),広く古英語の語序を統語論的に整理したOhkado (2001)などがあり,こうした先行研究を視野に入れながら,分析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古英語の語順に関して,選定した散文資料と韻文資料との間で異なる語序に関するデータを得ることができた.分析を通して,韻律論的な要因と意味論的要因とが関連することという見通しが得られた.また,図書,学会その他を語順研究に関する先行研究を調査し,最近の理論的動向を考慮しながら,本研究における分析と今後の研究の見通しについて検討することができ,当初の研究計画が大体のところ適切であったと判断される.また,研究成果の一部を学術論文として出版した.したがって,本課題の研究はおおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
はじめに,語序の時代的・地域的変異に関する本調査を行う前に,利用可能な文献資料においてサンプリング的調査を行い,本調査の準備をする.サンプリング調査は,学術的な利用に耐える文献を抄録したMitchell & Robinson(2007)などに基づいて行う予定である.サンプリング調査では,古英語・中期英語の散文を時代的・地域的に選び,重名詞句でない目的語が動詞に後続している用例を採集するために行う.また,韻文において,韻律的条件が働いている場合において,OV語序がどの程度後代に残存し,VO語序がどのような経過で増加していくのかをサンプリング的に調査する.散文においてOV語序が時代的に減少する実態を検討し,OV語序が許容される条件を音韻的・統語的・意味的に検討する.続いて,サンプリング調査を通して選定された文献資料に対して本調査を行う.調査の結果をデータベース化し,数量的分析が可能となるようにデータを資料ごとに整備する.
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次年度の研究費の使用計画 |
資料調査と分析のための図書購入,データベースソフトの購入,データベースの構築,調査・研究会への参加のための旅費など
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