研究課題/領域番号 |
23520588
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研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
小林 茂之 聖学院大学, 人文学部, 准教授 (00364836)
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キーワード | 古英語 / 語序 / 情報構造 / 韻律論 / 統語論 |
研究概要 |
古英語・中英語の語序に関する先行研究は,統語論的研究を中心に進められてきたので,最近の「原理とパラメータ理論」以降,最近の「ミニマリスト」の枠組みで行われた主要な研究の方向を調査,検討した.また,その過程で,意味論的研究で論じられている情報構造と語序に関する研究,韻律論的研究で行われているプロソディと語序に関する研究に関する調査・検討を進めている. また,古英語の散文資料Chronicle C,Orosius などのデータ収集を進めた.最近の情報構造に着目した研究で取り上げられているように,これらの資料では,文頭の接続詞が頻繁に用いられる点,等位接続句の扱いなどは,統語論の観点からだけでは分析が難しい現象があり,その研究意義は情報構造との関連から分析も語序の研究に重要であることが明らかにされてきている. 「原理とパラメーター」理論や「ミニマリスト」の枠組みによる近年までの古英語語序に関する先行研究は,「古英語の語順と空主語パラメーター」において要約し,情報構造との関わる等位接続句における空主語現象のデータについて考察した. ごく最近の研究では,情報構造との関連で従来のV2構文の統語構造は再考が行われていて,Vは近代ドイツ語のようなC位置にあるV2構造の他に,C位置以下のT位置などにあるV2構造があることが論じられている.また,プロソディの観点から語序の変化についても研究が出されていて,古英語における語序の研究はなお先端的な領域が開拓されつつあり,当研究課題も以上述べた観点から有意義に進められている. また,ケンブリッジ大学図書館,コーパスクリシティコレッジ・パーカー図書館で,資料における方言による変異について調査し,古英語の新しい変化の伝播の中で語序の変化に関して分析する目的で資料収集を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期英語の統語論的研究は,中英語期のV2喪失に重点がおかれていた.しかし,初期古英語におけるV2は,後期古英語・中英語期と比べ自由度が高いことは従来の研究でも知られていた. ごく最近の研究では,情報構造との関連で従来のV2構文の統語構造は再考が行われていて,Vは近代ドイツ語のようなC位置にあるV2構造の他に,C位置以下のT位置などにあるV2構造があることが論じられている.また,プロソディの観点から語序の変化についても研究が出されていて,古英語における語序の研究はなお先端的な領域が開拓されつつあり,当研究課題も以上述べた観点から有意義に進められている. したがって,初期古英語を中心としたデータ作成は概ね今後の研究にとってもなお研究意義が高く,古英語語序に関する統語論的研究の限界と意味論的なアプローチの必要性を空主語現象に関して示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
語序に関する情報構造の観点からの研究は盛んになってきている.また,韻律論的な観点からの研究も先駆的な研究が出されている.このような研究動向からみて,当研究課題は概ね正しい方向性を持っているので,「原理とパラメーター」理論や「ミニマリスト」に基づく統語論的研究の成果を踏まえて,情報構造や韻律論に関わる語序変化の問題について研究を進めていく. また,情報に関する語序の意味論的分析を行っていくために,初期古英語のデータを収集する.また,初期古英語以後の変化を分析するために,後期古英語,初期中英語のデータも収集し,語序の全般的変化が得られるようデータを充実させる.
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