研究課題/領域番号 |
23520590
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
高見 健一 学習院大学, 文学部, 教授 (70154903)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 機能的構文論 / 英語学 / 形式と意味 / 構文交替 / 二重目的語 / 使役文 / 受身文 / 場所格交替 |
研究概要 |
本研究では、5年にわたって「構文交替」を伴う6つの現象(二重目的語/与格構文と「所有」の意味、Cause 使役文/受身文、Let 使役文/受身文、自他交替、場所格交替、数量詞遊離)を考察する予定であるが、平成23年度は、二重目的語/与格構文と「所有」の意味、および Cause 使役文/受身文に関して研究を進めた。前者に関しては、従来、所有の意味が生じるのは、二重目的語構文のみであり、与格構文には生じないと主張されたり、動詞の意味特徴に依存すると主張されてきたが、綿密な調査から、この現象は3つの機能的、語用論的要因の相互作用によることを明らかにし、論文を執筆した。また、Cause 使役文とその受身文に関しても、従来の主張が妥当でなく、多くの反例があることをネイティヴスピーカーに対する調査やインターネットからの実例をもとに明らかにした。そして、これらの使役文や受身文が、他の make や let 等を用いた使役文や受身文とどのような点で異なり、どのような場合に使用されるかを明らかにして、論文を執筆した。これら2つの論文は、平成24年度中に出版の予定である。 さらに、これまでの受身文と使役文の研究をまとめ、開拓社から平成23年6月に『受身と使役ーその意味規則を探るー』の著書を出版した。その後、本書に対して多くの好意的な反響を得ている。 さらに、構文交替でよく知られる英語の場所格交替に関して研究を進め、純粋に〈場所〉として機能している要素が、〈物〉として解釈される場合があるという理由が、この構文交替に大きな影響を与えていることを示して論文を執筆し、高知英語学英語教育研究会のCDジャーナル『英語と教育』第2号の特別寄稿論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度は、本研究で考察予定の6つの現象のうち、二重目的語/与格構文と「所有」の意味、および Cause 使役文/受身文の2つを考察し、できればこれら2つの現象に関して論文を書くことを目的としていた。その目的が達成でき、さらに3つ目の現象である、英語の場所格交替に関しても考察を深め、論文を執筆できたのは、すでに本研究の申請前の段階からこれらの現象に関して調査、研究を進めていたことが大きな理由だと思われる。また、ハーバード大学名誉教授の久野氏と度重なる議論を行なえたこと、そして英語母語話者の Karen Courtenay 氏、Nan Decker 氏(ともに言語学 Ph.D.)から英語の例文に関する適格性判断、意見、興味深い指摘をたくさん得ることができたことが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、英語の場所格交替だけでなく、日本語の場所格交替に関しても考察を深め、両者に共通する規則と両言語間で異なる独自の規則を明らかにしたいと考えている。また、Let 使役文とその受身文、英語の自動詞と他動詞の交替、日英語の数量詞遊離に関する考察を深め、構文交替でよく知られている英語の場所句倒置に関しても研究を深めたいと思っている。 そして、これらの考察の途上で、ハーバード大学名誉教授の久野氏と議論を重ね、また英語の例文の適格性判断に関して、英語母語話者の Karen Courtenay 氏、Nan Decker 氏(ともに言語学 Ph.D.)に多くの意見を求める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
英語の構文交替に関して様々な現象を考察する上で、母語話者の適格性判断は極めて重要なため、適格性判断や調査を依頼する英語母語話者の Karen Courtenay 氏、Nan Decker 氏(ともに言語学 Ph.D.)に対して次年度の研究費の多くを使う予定である。また、文房具やパソコン周辺機器等も購入の予定である。
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