研究課題/領域番号 |
23520590
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
高見 健一 学習院大学, 文学部, 教授 (70154903)
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キーワード | 機能的構文論 / 形式と意味 / 構文交替 / 数量詞遊離 / 場所格交替 / 使役文 |
研究概要 |
本研究は、平成23年度から平成27年度にわたる5年間で、「構文交替」を伴う6つの現象を考察することを目的としているが、平成25年度の3年目は、数量詞遊離構文と場所格交替構文に関して研究を完成させることができた。そして、これらの研究をこれまで考察を進めてきた日本語の「~てある」構文、「いる/ある」を伴う存在文、所有文の研究と合わせて本の形にまとめることができ、平成26年度に『日本語構文の意味と機能を探る』というタイトルでくろしお出版から発行の予定である。本研究は、筆者がハーバード大学名誉教授久野すすむ氏とこれまで進めてきた「機能的構文論」に関する一連の研究であり、本書で扱う諸現象に関しても、これらの構文の意味や機能に基づく分析の重要性を示すことができ、これらの構文の適格性を動詞の特徴のみで説明したり、文の統語構造のみで説明したりする従来の分析が不十分であることを示せたのは大きな成果であると考えられる。 さらに平成25年度は、Cause 使役文とその受身文、Let 使役文とその受身文についても考察を深め、これまでの統語論的アプローチには多くの反例があることを示して、機能的構文論に基づく分析が提示できた。これらの研究は、他の Make 使役文、語彙的使役と迂言的使役の違いなどの他の使役文や、Make 使役文との考察と合わせ、平成26年度内に1冊の本として出版する予定である。 平成25年度には、英語の省略現象や倒置、時制やアスペクトを扱った『謎解きの英文法ー省略と倒置』、『謎解きの英文法ー時の表現』を出版することができ、多くの好意的な反応を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
5年間の本研究で考察を予定している6つの構文交替事象に関して、自動詞と他動詞の交替を除く5つの構文交替事象に関しては、論文をそれぞれの事象に関して書くことができ、この3年間で大きく進展したと考えられる。そして、これら5つの構文交替は、いずれも動詞の意味のみに基づいたり、文の統語構造のみに基づいているのではなく、文全体の意味や文脈等、非統語的な要因に基づいていることを示すことができた。このような進展が可能となったのは、一昨年にハーバード大学へ行き、共同研究者の久野すすむ氏と議論を重ねることができたこと、また今年度はメールで頻繁に連絡を行ったこと、さらに英語母語話者の Karen Courtenay 氏、Nan Decker 氏(ともに言語学 Ph. D.)の協力をあおげたことが大きな理由と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はまず、使役事象に関して、Make 使役文と他動詞(語彙的使役)の違い、Make someone quiet と Make someone be quiet の違い、kill someone と make someone die の違いなど、使役文に関して考察を行い、Cause 使役文、Let 使役文などのこれまでの研究と合わせて、まとまりのある研究書を完成させたいと思っている。また、日英語の自動詞と他動詞の構文交替も考察し、5年間の本研究を一段と進めて行きたいと考えている。
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