研究課題/領域番号 |
23520591
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 博雄 昭和女子大学, 人間文化学部, 教授 (50187754)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 結果副詞 / 結果形容詞 / 結果構文 / 様態規則 / 様態性の尺度 / 状況副詞句 / 機能統語論 / 事象意味論 |
研究概要 |
H23年度は、Ernst (2000, 2002)の「様態規則」とWickboldt (2000) の「様態副詞の事象完結一時取り消し機能」を組合わせながら、結果副詞と結果形容詞(結果構文における結果述語)が相補分布の関係にあることの反例と判断される用例を取り上げ、両品詞が関わる英文の文法性の違いを引き起こす原因を分析した。その研究成果を、日本言語学会(2011.11)における口頭発表及び本務校が発行する紀要への論文掲載により、学界に発信した。 具体的には、結果副詞と結果形容詞による結果状態の具現化のされ方の違いを、コーパス等で収集した現実の用例を検討しながら、「事象完結一時取消機能」が適用され易いか否か、という点に求めた。結果副詞に同機能が観察される要因として、次の2点を導き出した。(1)結果副詞は、語彙的に様態副詞から統語派生しているため、様態規則 (Manner Rule) における「比較」の概念を取り入れ易い、つまり、「比較」の概念が原因事象と結果事象の発生上の時間差を生み出す、及び(2)結果形容詞に比べて、結果副詞は主観的な判断を話し手が表明する場面で使用される傾向がある(cf. Broccias (2008))。この主観的判断が、「比較」の概念を結果副詞に取り入れ易くし、延いては、「事象完結一時取消機能」の適用を容易にしている。以上2点が、結果副詞と結果形容詞の機能論上の違いを生み出す主因である、という結論に達した。 本研究の成果は、英語及び日本語の結果構文研究の進展に寄与することが期待される。上の研究と同時並行的に、Hasselgard(2010)の副詞論を援用しながら、文末における英語状況副詞句の機能統語論的分析も行った。同分析を次年度の研究で更に深める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結果副詞と結果形容詞の意味機能の違いについては、コーパスやインターネット等を使用して、良質な用例を収集することができたため、今年度の比較的早い時期に分析結果を出すことができた。文末における状況副詞句の機能統語論的研究についても、Hasselgard (2010)などの副詞論を効率的に援用し、次年度の研究につながる考察・分析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
文末の状況副詞句研究の継続と同時並行的に、文頭における状況副詞句の生起条件について、機能統語論に基づいた分析を深める。ヨーロッパ系の生成文法において最近注目されているカートグラフィック・シンタックスにも着目する。 具体的には、(1)副詞が関わる多重主題構造(multiple-theme construction)の分析、(2)Haumann (2007)の節頭階層を援用しながら、節頭(文頭)に複数の副詞が生起する多重主題現象についての機能論的分析、(3)補文中の副詞の文頭移動現象の分析の3点に焦点を置く。研究方法としては、最新文献の精読により最新の理論を確認し、その成果をコーパスから収集した用例に照らし合わせながら、記述的・説明的妥当性の高い副詞論の構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度の科研費残金が発生している。その主な理由として、(1)設備備品等については、購入予定であった最新の研究文献(書籍、博士論文等)を、刊行延期等で年度内に入手できなかったということ及び(2)旅費等については、本務校の研究旅費を活用することができ、通信費についても支出の必要が発生しなかったということが挙げられる。 H24年度使用額によって、H23年度に購入できなかった英語統語論・意味論関係の最新の研究文献(書籍、博士論文等)を購入する。申請課題に関連する良質の最新文献を入手するために、科研費交付申請時の研究文献購入予定冊数よりも購入冊数を3割程度増やす。 旅費等については、日本英語学会、日本言語学会等の大会参加のために支出する。その他、主として、通信費(国内外の研究機関からの論文等の研究資料送付代金等)、論文・研究資料等複写手数料として支出する。
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