研究課題/領域番号 |
23520591
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 博雄 昭和女子大学, 人間文化学部, 教授 (50187754)
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キーワード | 多重主題構造 / 叙述・修飾構造 / 機能統語論 / 文末状況副詞句配列 / カートグラフィック・シンタックス / 節頭副詞統語論 / 指示性 / 副詞の長距離移動 |
研究概要 |
本年度は、叙述・修飾構造に関する最新の文献精読により理論的基盤を固め、その成果をコーパスから収集した用例に照らし合わせながら、記述的・説明的妥当性の高い副詞論を深化させた。具体的には、①文末における英語状況副詞句の機能統語論的分析を深め、複数の状況副詞句の不規則な配置に対する機能論的根拠を部分的に解明した。②文頭における状況副詞句の生起条件について、ヨーロッパ系の生成文法におけるカートグラフィック・シンタックスにも着目しながら、機能統語論に基づいた分析を行った。 特に、上の②については、Haumann (2007)の節頭階層に依拠した、副詞が関与する多重主題構造(multiple-theme construction)の統語分析の延長線上に、Haegeman (2012)のカートグラフィック・シンタックスに基づいた節頭副詞統語論を位置づけ、(i)節頭(文頭)に複数の副詞が生起する多重主題現象についての機能論的分析、及び(ii)補文中の副詞の文頭移動現象の分析の2点に焦点を置き、研究を進めた。研究成果として、(i)については、<英語のような非CLLD型言語では、介入要素が存在する場合、その左方に主題要素を、移動または併合により配置することはできない>ことに着目することにより、機能論的根拠を部分的に解明した。(ii)については、統語分析の限界を踏まえ、Pesetsky (1987)の「指示性(referentiality)」の概念に加え、Haegeman (2012)の「Mod(ifier)P分析」を援用することにより、副詞句の長距離移動現象に対する機能論上の条件を部分的に解明した。 当初の研究目的のうち、説明的側面については未解明項目が若干残ったが、記述的側面についてはほぼ計画どおり研究を進めることができた。研究成果の一部を論文(鈴木 (2013))に纏め、社会に発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①節頭(文頭)に複数の副詞が生起する多重主題現象についての機能論的分析、及び②補文中の副詞の文頭移動現象の分析の2点に焦点を置いた研究を順調に進め、来年度まで研究を延長している一部の研究項目を除いては、①と②についての理論的基盤の構築を、当初の計画通りおおむね終了させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23~24年度に得られた成果が、英語使用者の学習可能性の観点から、妥当な記述・説明に至っているか、ということに対する言語習得論的・言語使用論的検証を行う。 24年度末までに完成していない、申請課題の記述的・説明的研究項目の一部については引き続き研究を進めるとともに、以下の2点に着目しながら、英語副詞の言語習得論的検証を行う。①本課題申請者が収集した用例や副詞研究文献で提示されている用例とその説明の対応関係が妥当なものであるか、ということについて、英語母語話者(言語学を専攻としない者を選定)に対して、(i)個人面接(インタビュー)と(ii)アンケート調査(マークシートと記述併用)を実施する。②日本人英語学習者の副詞習得状況を調査し、その結果と本申請課題の記述・説明を照合し、矛盾する部分についての原因を究明する。つまり、日本人英語学習者の副詞の位置・配列の習得状況を調査することにより、英語副詞統語論・意味論の記述・説明を修正し、その精度を高める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の科研費残金が発生している。その主な理由として、①設備備品等については、購入予定であった最新の研究文献(書籍、博士論文等)を、刊行延期等で年度内に入手できなかったということ及び②旅費等については、本務校の研究旅費を活用することができ、通信費についても支出の必要が発生しなかったということが挙げられる。 平成25年度使用額によって、平成24年度に購入できなかった英語統語論・意味論関係の最新の研究文献(書籍、博士論文等)を購入する。申請課題に関連する良質の最新文献を入手するために、科研費交付申請時の研究文献購入予定冊数よりも購入冊数を3割程度増やす。 旅費等については、日本英語学会、日本言語学会等の大会参加のために支出する。本年度は、英語母語話者及び日本人英語学習者に対しアンケート調査等の実施を予定しているため、人件費・謝金の支出が加わる。その他、主として、通信費(国内外の研究機関からの論文等の研究資料送付代金等)、論文・研究資料等複写手数料として支出する。
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