研究課題/領域番号 |
23520594
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
都田 青子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (90256024)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 音韻意識 / 音韻知識 / 有標性 |
研究概要 |
本研究では、障害児のデータを健常児のものと比較しながら、有標性の観点から整理、分類し、評価基準法の確立に役立つ基礎資料を提供することを目的としている。 本プロジェクトの開始年度である平成23年度では、日本語の障害データ、特にダウン症児のデータに焦点を当て、健常児の音韻獲得データと比較しながら「音韻的な」視点から研究を行なった。これまでダウン症児は健常児に比べて極度に音韻操作能力が劣っているという理由から、ほとんど「音韻的」な観点からの研究が行なわれてきていないが、実はダウン症児への音韻操作課題そのものに問題がある可能性があるということが先行研究でも指摘されている(e.g. Helen et al. 2002)。実際、ダウン症児へのパイロット実験の結果、課題語を十分に精査、吟味することで、韻律構造上の「フット」単位の知識/意識を有している傾向が読み取れる結果が得られた。このことから、ダウン症児の障害要因を取り除いた本格的な音韻操作実験に向けての一定の方向性が掴めたといえる。 さらに、上記の有標性の観点からのアプローチとともに、障害児が構音の説明をより理解しやすいように、調音器官の3D教材を並行して開発し始めた。本教材が完成することで、障害児の「音韻意識」をより高める効果が期待できるような教材作成が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プロジェクト発足当初は、障害児のデータを有標性の観点から分析し、音韻意識、音韻知識に関する理解を深めることを目的としていたが、それに加えて、障害児を支援することが可能な、構音をよりわかりやすく説明する3D教材の開発にも携わることができたという点においては、単に理論的な貢献のみならず、実践的な観点からの貢献もできているから。
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今後の研究の推進方策 |
読みの発達に障害が予想される子どもたちに対して、早めの措置がとれるよう、欧米の標準化された音韻情報処理能力の評価法を参考としながら、日本語独自の音韻発達評価基準法の確立をめざし、音韻意識、音韻知識に関する知見を深めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度のパイロット・スタディの成果を踏まえ、本格的な障害児対象の音韻操作実験を実施していく。特に初期の音韻知識や音韻意識についての理解を深める上で、音韻能力が一般的には著しく劣っているといわれているダウン症児のデータは重要と考えられる。このことから、ダウン症児に適した音韻課題を用いた実験を行い、音韻発達に対する理解を深めながら、音韻理論の妥当性についても検証していく。
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