研究課題/領域番号 |
23520594
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
都田 青子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (90256024)
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キーワード | 音韻意識 / 音韻知識 / 有標性 |
研究概要 |
本研究では、障害児のデータを健常児のものと比較しながら、有標性の観点からデータを整理、分類し、音韻発達評価基準法の確立に役立つ基礎資料を提供することを目的としている。 本プロジェクトの開始年度である平成23年度では、日本語の障害データ、特にダウン症児のデータに焦点を当て、健常児の音韻獲得データと比較しながら「音韻的」観点から研究を行った。これまでダウン症児は健常児に比べて、極度に音韻操作能力が劣っているという理由から、ほとんど「音韻的」な観点からの研究が行われていない。しかし、ダウン症児への音韻操作課題そのものに問題がある可能性があるということが先行研究でも指摘されるようになり(e.g. Helen et al. 2002)、評価基準法そのものの見直しが必要ではないかという認識が広まりつつある。 実際、ダウン症児への実験を行った結果、課題語を十分に精査、吟味することで、韻律構造上の「フット」単位の知識/意識を有していると示唆される結果が得られた。 今年度は、新たな評価基準法確立のために必要な基礎資料として、韻律構造上の単位間の関係についてさらに詳細に検討するために、小学生対象の逆唱実験データをフットと音節、音節とモーラの関係で分析した。その結果、小学低学年ほど、フット、音節の境界の一致・不一致の影響を受けていると思われるエラーが多いことがわかった。 上記のデータ分析と並行して、昨年度から開始した調音器官の3D教材の開発も今年度引き続き行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな音韻発達評価基準法確立に向けての基礎資料を提供するという当初からのプロジェクト目標は、ダウン症児のデータに加え、健常児の小学低学年と高学年対象の逆唱課題から得られたデータが得られたことでさらに一歩前進を遂げた。特に韻律構造上の上位単位が音韻発達に遅れのある幼児、児童の音韻知識や音韻意識を正しく評価する上で重要であることがより一層明確になった。また、昨年度から開始した調音器官の3D教材も、国際学会での発表を射程に入れられる段階まで順調に進んでおり、理論的な貢献のみならず、実践的な面からの貢献もできていると思われるから。
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今後の研究の推進方策 |
読みの発達障害が予想される幼児に対して、早めに措置がとれるよう、欧米の標準化された音韻情報処理能力の評価法を参考としながら、日本語独自の評価基準法の確立をめざし、音韻意識、音韻知識に関する知見を深めていく。さらに、障害者にも理解しやすいような調音教材の開発も合わせて進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
音韻発達に対する理解を深めつつ、音韻理論の妥当性についても検証していくために関連図書を購入する予定である。また、3D教材開発も引き続き行うことから、開発に関わる費用が必要となる。さらに、本教材は国際学会での発表を意識できる段階まで開発が進んだことから、積極的に関連学会での成果発表を行う予定でおり、そのための旅費に使用する予定でいる。
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