研究課題/領域番号 |
23520595
|
研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
島村 礼子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (80015817)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 句と語の区別 / 「形容詞+名詞」形 / 複雑事象名詞と単純事象名詞 / 名付け機能 / 接辞の有無 |
研究概要 |
動詞由来名詞には事象と結果の解釈があることは周知のことであるが、本研究では、同一の接尾辞が用いられていても複雑事象の解釈が可能かどうかに関して、個々の名詞ごとに異なる場合があり得ること(例:endurance対acceptance)、また-(at)ionのように生産性の高い接尾辞の付いた名詞であっても中にはinformationのように複雑事象名詞にはなりにくいものがあることを明らかにした。このことは、個々の動詞由来名詞の相対頻度に違いがあり、接辞と基体が別々にレキシコンにリストされるかそれとも一つの語としてリストされるかの違いによって説明できることを示唆した。また接尾辞の付いていないゼロ名詞に関しては、Grimshaw(2004)の「2段階名詞化」の分析が妥当であることを述べた。しかしながら平成23年度の段階では、上記の主張に対して、コーパスの検索を通して統計的な裏付けを与えるまでには至らなかった。 さらに「形容詞+名詞」形に注目して句と語の相違点について考察した。英語では形容詞は句の内部であろうと語の内部であろうと屈折接尾辞は付加されない。一方日本語では、形容詞は句の内部では屈折接尾辞が付加されるが、語の内部では付加されず(例:「安い物」対「安物」)、「形容詞+名詞」形の複合語は多少とも意味的に不透明である。それに対して形容詞に屈折接尾辞が付かない英語では、「形容詞+名詞」形が複合語に生起しても意味の透明性を保つ場合がある(例:「[small car] driver)。しかしそのような場合であっても、名付けの機能という観点から見ると、対応する句には見られない特徴(制限)があることを指摘した。名付けの機能に関しては今後さらに精緻化する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動詞由来名詞の事象と結果の解釈の区別と接辞の有無との関係に関して、コーパス(主としてCOCAおよびBNC)の検索が現在までのところ十分ではなく、海外の学会誌に投稿することができなかった。しかし、主として「形容詞+名詞」形を取り上げて、接辞の有無と句と語の区別との関連について考察することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
コーパスの検索が十分ではないので、英語では主としてCOCAとBNC、日本語では現代日本語書き言葉均衡コーパス「中納言」を用いて、動詞からの名詞化および動作主を表す動詞由来名詞における接辞の有無について考察する。あわせて平成23年度に続いて「形容詞+名詞」形の句と複合語の対比を、接辞の有無と関係させながら行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
BNCなどのコーパスの使用料および海外の学術誌への投稿のための謝金などに使用予定である。
|