研究概要 |
本年度は、まもなく出版予定の著書『語と句と名付け機能―日英語の「形容詞+名詞」形を中心にー』の原稿完成に向けた研究を主として行なった。英語の場合は、日本語と違い、「形容詞+名詞」形が句の構造をもとうと語の構造をもとうと、形容詞に屈折接尾辞が付かないため形態が同一で、したがって、句か語か俄には判断できないケースが見られる。一つには、意味の透明性を保持している「形容詞+名詞」形が複合語内部の非主要部に生起する場合がある(例: [fresh fish] shop)。複合語内部に現れるこのような「形容詞+名詞」をどのように捉えるべきか、具体的な分析を提示し、さらに、このような「形容詞+名詞」形と、純粋な複合名詞と考えられる「形容詞+名詞」形(例: blackbird)とを区別すべきことを主張した。また、Japanese [small car]など、通常の英語の限定形容詞の語順に反して主要部名詞に隣接して生起する形容詞と後続の名詞がいっしょになった形は、統語構造とみなすべきか、形態構造とみなすべきかに関しても、結論は出なかったが、多少の議論を試みた。さらに、形容詞には、性質形容詞の他に、関係形容詞(例: solar, professional)があり、いろいろな点で性質形容詞とはその特徴を異にすることを指摘した。関係形容詞は、様々なラテン語起源の接尾辞が名詞に付加されて形成されるが、それらの個々の接尾辞は特定の意味とは結びつかず「転換」(transposition)によって派生し、性質形容詞とは異なり,本来的に「分類機能」(classifying function)をもつが故に、「関係形容詞+名詞」形は名付け機能をもつことを提案した。
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