研究概要 |
本研究は「アジアのリンガフランカとして、日本語母語話者の英語音声面における中心特性(コミュニケーションの阻害要因に関わる特性)の確立」を目的としている。この目的に鑑み、以下のことを行った。第一に、日本人英語に慣れている英語母語話者を対象に行った日本人理系研究者英語音声の聴き取り実験の結果を分析したもの(2008年の第14回国際英語学会で発表)をさらに精査し、音響分析を加えた。日本人英語に慣れている英語母語話者にとりインテリジャビリティを阻害する日本人英語音声の中心特性として、1.l・rの誤発音, 2.摩擦音の発音の弱さ, 3.気息音がないなど、破裂音の発音の弱さ, 4.母音の長さの間違え, 5.強勢付与の欠如および非実現、が挙げられる。これらの成果を論文にし、大学英語教育学会の学会誌JACET Journal No.58 (2014)に掲載された。第二に、日本人英語に慣れていない英語母語話者を対象に日本人理系研究者英語音声の聴き取り実験を実施し、その結果を分析し、日本人英語に慣れている英語母語話者による実験結果と比較した。日本人英語音声特徴の中で特に日本人英語に慣れていてもコニュニケーション阻害要因となる特性と慣れてくると阻害要因でなくなる特性とを峻別することができた。すなわち英語母語話者とのコミュニケーションにおいて阻害要因となる中心特性の精緻化をはかることができた。その結果を「第六回English/as/Lingua/Franca」(2013年,9月ローマ)で発表した。アジアのリンガフランカとしての中心特性を確立するためには、さらに非英語母語話者による聴き取り実験を行い、その結果を分析することが必要である。現在、韓国語母語話者による聴き取り実験を行っており、その成果を第7回ELF(2014年,9月アテネ)で発表する予定である。
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