研究課題/領域番号 |
23520604
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研究機関 | 尚絅大学 |
研究代表者 |
廣江 顕 尚絅大学, 比較文化学部, 教授 (20369119)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | direct quote / embedding / clausal adjunct / manner-of-speaking verb |
研究概要 |
研究初年度である今年度は、最も基本的な埋め込み形式のひとつだが、生成文法の研究対象(の一部)としてはあまり俎上に上ることはなかった直接引用文(direct quote:DQ)の埋め込み構造の検討から着手した。 DQは従来から名詞表現ではあるものの、格(Case)素性は有する一方、一致(Φ)素性は有さない特殊な範疇だと考えられてきた。Collins(1997)の分析によると、DQそれ自体が移動するのではなく、代わりにquotative operatorが移動するという提案を行った。 しかしながら、DQに関する広範な事実を検証した結果、DQが生起可能なのは、Collins(1997)が提示した目的語及び主語の位置のみならず、前置詞の目的語及び主語位置の名詞句に隣接する同格名詞句の位置にも現れることを発見した。また、目的語を選択する動詞だけがDQを選択するだけではなく、目的語を選択できない動詞も同様にDQを選択することが可能である事実も発見した。 こうした事実が示唆することは、以下の2点において重要な理論的意味がある。つまり、(1)DQはある種の付加部節(clausal adjunct)を構成していると考えられる点と、(2)DQを埋め込む統語形式はほぼ一律で、UGの核(core)と呼ばれるもに属している可能性があるという点である。(1)の提案は、実際、DQからのwh句やその他の要素の取出しに関する文法性を観察してみると一概に容認不可能であることからも支持される。この点は「発話様態動詞(manner-of-speaking verb)」のthat節と極めて似た振る舞いを示す。 さらに、(1)の提案は、日本語を観察しても、DQを導入するトが極めて広範囲な動詞(あるいは述語タイプ)に選択されるという類型論的な考察からも支持される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由としては、DQに関する広範囲にわたる事実を検証した結果、Collins(1997)に代表される先行研究では見逃されていた新しい事実が発掘できたことが挙げられる。この事実群は、Collinsらが仮定していたDQに関する仮説を覆し、DQはclausal adjunctを構成しているとの理論的な提案を行うに至った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、DQ内から如何なる要素も移動(あるいは摘出)できないという事実に対し、これまで唯一説明を試みているHollebrands(2003)の検証を行う予定である。HollebrandsはPoint of Viewという概念を援用し説明を行ったが、反例となる事実(描出話法)を提示することで反証したい。 同時に、対案として、「発話行為の合成(speech act compounding:SAC)」というメカニズムを提案したい。を挙げたい。可能なのかに関して、まだ明確なメカニズムができていない点がある。SACによりこれまで説明されてきた事実をreprojectionあるいはrelabalingという文法操作で説明を試みるSuzuki(2011)に反論を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:270,000円 先行研究の文献(図書)や関連文献の入手旅 費:180,000円 日本英語学会秋大会や関連学会への出張旅費謝 金: 80,000円 インフォーマントへの謝金その他: 30,000円 通信費等 *(昨年度の未使用分を含む)
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