研究課題/領域番号 |
23520605
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研究機関 | 鶴見大学短期大学部 |
研究代表者 |
小倉 美恵子 鶴見大学短期大学部, 歯科衛生科, 教授 (60074291)
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キーワード | 複雑適応体系 / 語彙体系 / ネットワーク / 曖昧性 / 語順進化 / 回帰性 / 多義語 |
研究概要 |
複雑適応体系に内在する基本原理の観点から、1語彙体系の歴史的発達とsmall-world networkの関係を探る。2光トポグラフィーを用いて、言語進化における曖昧性の排除と脳の機能を明らかにする。 1 語彙体系の歴史的発達とsmall-world network: Historical Thesaurus of the Oxford English Dictionary (Christian Kay et al., Oxford 2009)の全動詞について、多義語、同義語、初例、最終例の情報を盛り込んだdatabaseの完成させた。これに基づき、古英語、中英語、初期近代英語、近代英語及び現代語のdatabaseを作成し、動詞の単語間の距離と、群を形成する単語数を、単義語のみの場合、単義語に多義語を加えた場合について計量、分析した。単義語に多義語が加わることにより、語義間の意味が緊密になるsmall-world network が形成されることを明らかにした。 2 曖昧性の排除と言語進化: 関係詞に見られる回帰性は、歴史的には並列文から発達し、それが普遍的機能である階層性による配置により生じたものであることを示した。その過程で曖昧性の原因となる中央埋め込み文が回避され、OV語順からVO語順が生じることを明らかにした。回帰性とその結果生じたVO語順により、古英語の談話構造と密接に結びついた統語構造が、中英語の緊密な統語構造に変化した。それに伴い進行形、完了形、助動詞、定冠詞が生じた。これらは、古英語で用いられていた文脈から判断できる曖昧な形態を、より明確な形態にしようとする話者の意図により生じたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.語彙体系の歴史的発達とsmall-world network 完成したHistorical Thesaurus of the Oxford English Dictionaryのdatabaseに基づき古英語、中英語、初期近代英語、近代英語及び現代語のdatabaseを作成した。これら時代に基づいた4種類のdatabse について、動詞の単語間の距離と、群を形成する単語数を、単義語のみの場合、単義語に多義語を加えた場合について計量、分析する作業を完了させる予定であったが、やや予定より遅れている。 2. 曖昧性の排除と言語進化 昨年に引き続き曖昧性についての実験を行う予定であったが、更に進めて、古英語の談話構造と結びついた統語構造が、中英語の緊密な統語構造へと変化することに伴い、時制と相がどのように脳から影響を受け、あるいは脳に影響を及ぼすかも調べることとし、その準備を行ったため、予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.語彙体系の歴史的発達とsmall-world network 分析を完成させ、更に各時代での語義体系の中で、普遍的な概念構造から生じた可能性の多い単語と、他方言語が概念構造に影響を与えた可能性の多い単語に分類し、これらが語彙の樹状構造のどの部分を構成しているかを明らかにする。 2.曖昧性の排除と言語進化 時制と相が、どのように脳から影響を受け、あるいは脳に影響を及ぼすかを調べる実験を光トポグラフイーを用いて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験のために、費目のその他として予算をとっておいたが、その実験をさらに拡大して行うための準備を行うことで終わった。その残金と今年度の予算により実験を行う。更に語彙体系の歴史的発達のデータの分析を完成させる。
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