研究概要 |
日本国内における慣用連語の研究は主に共時的レベルの研究が多く、通時的な側面からの研究は少ない。当該年度では、英語発達過程の通時的研究、特に英語に借用されたフランス語法の研究で知られるPrins, A. A. (1952; French Influence in English Phrasing. Leiden: Universitaire Pers )の論文を再分析・再検討した。特にcomposite predicateと呼ばれる「軽動詞(do, give, have, make, take) + 動詞派生名詞」を含む「動詞+名詞」から成る慣用連語に焦点を合わせた。 Prinsの論文発行年1952年から60年近く経過しているため、OED、BNCなどのコーパスを利用して、フランス語法を借用した「動詞+名詞」の慣用連語を検索し、Prinsの用例と比較し妥当性を検証した。Prinsの論文の不足を補い修正・追加などを施した。Prinsはフランス語から英語に借用された「軽動詞+(動詞派生)名詞」の中で、フランス語源の名詞とゲルマン語本来の名詞を区別なく列挙している。ゲルマン語源の名詞とフランス語源の名詞を区別し、「軽動詞+(動詞派生)名詞」の慣用連語を語源別に分類することを提案した。さらに、今回の分析結果とOEにおけるOE本来のcomposite predicateの研究で知られる秋元(1999)の研究を結び付けることを示唆した。OEからMEにかけて生じた語順 (word order) や語彙の変化が「軽動詞+(動詞派生)名詞」の構文に大きな影響を与え、特にフランス語法からの借用がidiomatization(イディオム化)を進め、現在の慣用連語へと発達していったと考えられるからである。
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