平成25年度は、収集した実際の口頭発表時の質疑応答場面について、文字化した資料および映像をもとに分析を行い、特徴を検討した。当初、コミュニケーション・ストラテジーに焦点を当て、研究を進めることを計画していたが、留学生と同様に日本人学生の発表においても発表者と質問者が会話の話題を円滑に継続できないことがしばしば見受けられた。情報や思考の差異は、留学生、日本人学生いずれの場合でも質問者との間に起こりうることと捉え、発表者と質問者が互いの差異にどのように対応し、会話を継続させていくのかを考察することがより重要であると考えた。 そこで、質疑応答時の会話の流れにおいて、コミュニケーション・ブレイクダウンの発生から、不明な点を修復し、元の会話に回復するまでの一連の会話(second sequence)について、会話分析の手法を参考に、分析した。 対象とした口頭発表は、発表者が学生、質問者が教員という構図であったため、教室活動におけるIRF(Initiation-Response-Follow up)構造と一見類似していた。しかし、発表内容そのものに関する情報に関しては、発表者である学生がより詳細に理解していることも多く、Follow-up部分の言語表現はあくまでも一質問者が理解できたことを示す「了解」で終結した。よって、研究発表会においては、発表者である学生が、発表に対する責任者としてその場に臨んでいることがわかる。また、その一方で、コミュニケーション・ブレイクダウン時、学生がどの点が理解を阻害しているのかを示すことができないと、質問者である教員が会話の回復に向けて、言い換えを行ったり、一つ一つ確認作業を行いながら、質問の回答を得ようとする様子が見られた。発表者である学生がより積極的にかかわるためには、アサーションコミュニケーション等の視点から教育が必要であることが示唆された。
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