研究課題/領域番号 |
23520611
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
木戸 光子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20282288)
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キーワード | 作文 / 日本語学習者 / 文章構造 / 日本語母語話者 / アカデミックライティング |
研究概要 |
本研究の目的は、文章展開機能による文章構造分析を応用して、上級日本語学習者のための作文教材を開発することである。今年度は作文データベースの完成、および、文型リスト作成・用例収集・文章構造の手がかりとなる文型の特定を行った。また、文型分析の成果を2012年8月に名古屋で行われた日本語教育国際大会に2件発表し、2013年3月発行の『日本語教育論集』(筑波大学留学生センター発行)に報告した。 (1)作文データベースの完成:収集した作文をデータベース化した。大学で行った作文授業の受講者から承諾書を得たものについて、日本語上級学習者の大学生の作文データ計211名分のレポート、短作文、および、文章表現の授業の日本語母語話者の大学生の作文データ30名分のレポート2種、エッセイ、手紙、短作文を電子化した。 (2)文型リスト作成、作文での文型出現頻度調査、文章構造の手がかりとなる文型の特定:初年度作成の「日本語文型辞典」(グループジャマシイ編、くろしお出版)に基づいて文法的な言語形式の意味機能別リストに加えて、文型辞典2冊および作文教科書4冊から文型を抽出して文型リストを作成した。7冊分の文型リストの項目から作文の文章構造に関与する文型を抽出するため、複数の文型辞典・作文教科書に出現する文型を抽出するとともに、それらの文型の作文での使用状況を、日本語母語話者の大学生の作文と日本語学習者の作文について調査し分析した。その結果、文章ジャンルや文体、作文のテーマによって文型の出現頻度が異なること、さらに文型辞典や作文教科書の意味機能の記述とは使用状況が異なる文型があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度で作文のデータベースは完成し、分析項目の特定と文章展開機能の分析のための意味機能別文型リスト作成も終え、作文の文章構造分析に関して量的な調査に着手できた。ただし、多種多様な作文を対象とすべく当初計画の100名の学習者作文から2倍の学習者の作文をデータベース化したため、データベース化に時間がかかった。さらに、教材化に当たって、当初予定していた作文教科書よりも段落ぐらいの言語サイズでの作文用例集のような、教科書と辞書の間に位置する形式のほうが学習者の作文支援には有用であるとの判断により、教材化の方針を変更した。そのため、教材の試作版完成と授業での一部試用、および学習者へのインタビュー調査とウェブサイト開設による作文支援を3年目に実施するよう変更した。
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今後の研究の推進方策 |
作文データベースを用いて質的分析の面から文章展開機能の分析を進め、その成果を作文教材にする。同時に授業実践での教材の有用性の検証も行うため、作文授業への試用、学習者へのインタビュー調査、作文支援のウェブサイト開設を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
作文データベースの規模拡大と教材化方針の変更のため、2年目に予定していた教材試作と試作版の使用、学習者へのインタビュー、作文支援ウェブサイト開設は最終年度に行うことにした。そのため、教材作成の機材と印刷費、インタビュー用の機材とアプリケーション購入費、印刷やインタビュー補助の短期雇用の人件費などの経費を最終年度に使用する。また、作文データベースを用いてさらなる質的分析も行うために、コーパス等の公開データの使用料と資料費、データ分析補助の人件費も必要とする。
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