研究課題/領域番号 |
23520614
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
菅原 雅枝 東京学芸大学, 国際教育センター, 准教授 (80594077)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 外国人児童生徒 / 在籍学級 / 教科学習 |
研究概要 |
初年度である平成23年度は、主に「学級内での言語力の差への対応」の実態を把握するため、以下の点について調査を行った。 1点目は国内の外国人児童生徒が在籍する学校の訪問調査であり、日本の学校教育における指導の実態を把握するために実施した。具体的には、外国人児童生徒の在籍校(6校)において授業の様子を参観し、その後授業担当者から日本語力が十分でない生徒への対応、それに関する研修受講経験などについて聞き取り調査を行った。調査したいずれの授業者も外国人児童生徒への教科指導に関する研修の受講経験はなくこれまでの教員としての経験に基づき指導を展開していた。しかし、必ずしもその指導方法が外国人児童生徒にとって最適であるとは思っておらず、よりよい指導の方法を学びたいと考えているという現状が明らかになった。 2点目は日本同様に「第二言語教育専門家」またはそれに類する教員資格のシステムを持たず、さらに第二言語話者にもインクルーシブ教育を実施するイングランドの実態調査である。多言語多文化環境にあるイングランド中部~北部の3つの小学校で、授業の観察、教員、管理職からのインタビュー調査、指導に関する資料の収集を行った。これらの学校では、グループ活動時間の多さ、言語能力別グループ編成と複数の指導者の存在、教科横断的なアプローチ、教材選択の自由さなど、イングランドの初等教育の特性を生かして児童間の英語力の差に対応していた。また、教育委員会、大学教員など複数の研修の企画・実施担当者からイングランドでの外国人児童生徒教育に関する研修の現状について聞き取り調査を実施した。政府が教員研修用の素材を集め、インターネットを通じてアクセスできるしくみを作っているものの、必ずしも十分に活用されているとはいえない状況であることがわかった。この点は本研究でも大きな課題となることが予想され、対応方法の検討が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度については、インタビュー等による教育現場の実態把握を中心に研究を進めた。質問紙による調査には着手できなかったものの、個々の状況の違い及び教育実践におけるその影響の大きさを考えると、対面調査によってより詳しい情報を収集できたことは、本研究の推進にとってマイナスとはならないと考える。同様に当初の予定になかった英国調査も、日英の外国人児童生徒教育を巡る類似性から有効であった。したがって、総合的に見るとほぼ順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は以下の点について研究を進めていく予定である。 まず、国内の外国人児童生徒在籍学校調査(授業参観、教員・管理職へのインタビュー)を継続し、教員がどのように学級内の言語能力差に対応しようとしているか、どのような知識・力量が必要とされるかを検討する。同時に国内の教育現場における課題を聞き取り、欧米スタイルの指導方法、研修方法を検討する際の資料として収集する。 Sheltered Instruction及び類似する教育方法、教員への研修方法を整理する。当初の計画ではSheltered Instruction Observation Protocolのみを取り上げていたが、オーストラリアの教員研修(南オーストラリア州のUnlocking the worldなど)、英国のCollaborative Teachingなども対象に加える価値があると考える。同時にアメリカ、イギリス、オーストラリアの教員養成、教員研修及び教科学習の進め方を文献や現地調査を通して整理し、日本との違いを明確にしておく。 上記の点を統合し、欧米のモデルを日本の教育現場での使用という点から検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の主な支出予定は以下の通りである。 国内旅費としては、三重県、愛知県、茨城県、東京都、神奈川県の公立学校において学校訪問調査のための旅費を計上する。三重県、愛知県はそれぞれ1泊、その他は日帰りの予定である。 また、ワシントン、南オーストラリアでの海外調査のための旅費を計上する。これは、英語を母語としない児童生徒を含む学級を担当する一般教員に向けた教員研修プログラムを実施しているアメリカワシントンにあるCenter for Applied Linguistics及び南オーストラリア州教育局を訪問し、研修プログラム、研修実施上の課題、教員からの評価などについて研修実施者から聞き取り調査を行うものである。なお、上記の通り、調査の対象をオーストラリア、イギリスのプログラムに広げたため、当初はアメリカへ2回の調査を予定していたが、そのうちの1回をオーストラリアへ変更した。 その他、書籍購入、調査データ入力補助者への謝金に研究費を使用する予定である。
|