研究課題/領域番号 |
23520614
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
菅原 雅枝 東京学芸大学, 国際教育センター, 准教授 (80594077)
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キーワード | 外国人児童生徒 / 在籍学級 / 教科指導 |
研究概要 |
アメリカ・イギリスの調査では、英語を母語としない児童生徒が在籍する初等・中等教育学校の視察を行うと共に、教員研修実施者・教員養成課程担当者・教育委員会担当者・現職教員・外国人生徒多数在籍校管理職などから聞き取り調査を行った。アメリカの一部の州ではESL生徒の在籍学級担当者に対し研修を義務づけている上、教科とESLを連動させたSheltered Instructionをはじめ様々な団体が主催する研修機会もある。しかし時間的・経済的な理由から研修参加を負担と感じる当事者も多い。イングランドの研修は学校単位で実施されるケースが多く、ESL児童生徒への指導はその優先順位が低くなる傾向があり、このような研修の意義を現場に伝えるための戦略が課題となっていた。一方、これら児童生徒が多数在籍している学校では独自の指導体制を作り上げているが、学校間でそれを共有する場は限られていた。 日本国内の教員、教育委員会関係者からの聞き取りからは、外国人児童生徒教育担当者以外の教員を対象とした教科指導に関する研修が組まれている地域はわずかであること、その一方で多数在籍校を中心に日々の教育実践の検討といった形で研修が行われている可能性があることが分かった。 今年度の調査からは、在籍学級での教科指導におけるESL/JSL児童生徒への教員の支援について、①関係者はその重要性を訴えているものの一般教員自身の認識は必ずしも高くないこと、②そのため、研修参加を負担と感じ易いこと、③校内ではさまざまな指導方法やその検討が行われているがその情報が他校に共有されにくいこと、の3点が共通課題として見られた。一般教員対象の研修の実現には、まず研修の意義の周知が必要であり、さらに場の設定、内容の精選による負担感の軽減が求められると推測される。調査により、具体的な研修プログラム作成にむけた指針が明確になった点は有意義であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカ、イングランドにおけるESL生徒への教科指導及びESL生徒が在籍する学校での教科指導と現職教員研修の現状と課題の把握については概ね順調に調査が進んでいる。ただし、予定していたオーストラリアへの調査は実施できなかった。 日本国内の状況については、現在のところ関係者からの聞き取りを中心に進めている。上記概要に記載の通り、外国人児童生徒を含む学級における教科の指導のあり方というテーマでの公的機関が行う研修はごく限られている。また、各学校の課題に対応するための校内研修として実施されるケースもあり、紙面等による質問ではその現状を把握しにくいという状況が判明した。このため、当初の予定とは多少異なるが、聞き取り調査を中心に情報収集を続ける必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
海外におけるESL生徒への教科指導方法の研修のあり方として、本年度実施できなかったオーストラリアの調査を行う予定である。南オーストラリア州の大規模な一般学級担当者向け研修、ビクトリア州の少数在籍校教員への研修や自治体の支援のあり方について担当者に聞き取り調査を行う。英米については、文献や電子メール等を利用した聞き取りなどを継続する。これまで調査した英米2カ国とオーストラリアの状況とを合わせ、ESL児童生徒を含む学級での教科指導研修で取り上げられている内容、その方法、研修実施上の留意点等を整理する。 日本国内では三重県教育委員会の教員研修の取り組みや、京都市教育センターと地域小中学校との連携による在籍学級指導の取り組みなどを中心に、自治体としての指導、研修のあり方を検討する。また、在籍学級における指導の視察、担当教員からの聞き取り調査を継続する。海外の研修について日本国内の教員、教育委員会担当者の意見を聞き、日本で求められる研修の内容について検討し、国内外の教員研修の現状、プログラムのあり方、実施方法などを総合して、研究のまとめとしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
現地で購入した切符(ロンドン-シェフィールド-リーズ-ノッティンガム-ロンドン)が若干ずつ予定より低額であったため、残額が生じた。次年度の研究費と合わせて以下の用途に使用する。 ・国外旅費:オーストラリア(ビクトリア州及び南オーストラリア州)教育局 ・国内旅費:三重県教育委員会、京都市教員研修センター等 ・謝金:調査資料等の整理、データ入力作業
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