平成24年度までの調査において、国内外を問わず外国人児童生徒に深く関わる担当者と一般の教科担当者の間に、教員研修の必要性の認識に大きな差があることが示された。このため平成25年度は、一般教員への周知の在り方を中心に調査を行い、以下のような結果を得た。 国内のJSL児童生徒多数在籍校においては彼らの言語的ニーズに配慮した授業に関する研究が見られ、少数在籍校でもJSL児童生徒教育に関心を持つ教員が自主的に授業を公開する、研究として取り上げるなどの取り組みがある。しかし、教員への聞き取り調査では、在籍学級でのJSL児童生徒に配慮した指導実践を行い、研究していくには、学校・地域全体の研究、情報共有の体制づくりが必要であるとの指摘がなされた。また、担当者の異動により研究の維持が困難になるなど、「リーダー的存在」の有無が学校・地域の取り組みに大きく影響しているという現状が確認された。 一般教員に向けて外国人児童生徒の言語文化背景に配慮した指導を行う必要性を伝える方法の調査として、初期集中英語指導クラスを設置して対応にあたるサウスオーストラリア州教育省の担当者及び、初期集中英語指導教室担当者へのインタビューを行った。同州では教育省が積極的・直接的に学校管理者への情報提供を行うことで管理者の意識の改革を目指し、それによって校内研修の機会と質を高める取り組みを始め、効果を上げているとのことであった。さらに、英語学習者の到達度を報告する共通の書式を作り、一般教員にわかりやすい情報提供の在り方が検討されていた。一方で各学校ではESLクラスが独立したユニットとして扱われており、このため校内でESL教員の専門性を一般教員に伝達する機会を持たない学校も見られた。 本調査から一般教員に向けた研修ではその内容と同時に研修及びその後の研究を可能にする体制づくりが必要であることが示された。
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