研究課題/領域番号 |
23520617
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
丸山 千歌 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (30323942)
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研究分担者 |
小澤 伊久美 国際基督教大学, 教養学部, 講師 (60296796)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本申請では、平成22年度までの科研プロジェクトの発展的研究として、研究代表者の所属機関の協定校との連携により、学習者条件を一定に保った形で、短期交換留学プログラム生の留学前、留学中、留学後の縦断的研究を行い、教材作成・教材選択・授業運営への提言を行うとともに、留学生30万人計画を遂行する時代を迎える中で留学という観点から、日本語教育、特に日本語授業に新たな価値付けをし、発信することを目指す。 研究代表者らのこれまでの研究成果から、留学前の日本語学習歴や渡日歴、民族性などの要因が同じでも、ステレオタイプ的な教材の読み取りは留学することだけでは変わらず、留学中の接触体験の深さと新味が、日本語学習者の批判的な視点を持った、主体的な読みを促す鍵になるという確信を得た。一方、学習者要因として、留学前までに培われたステレオタイプや、彼らが受講する日本語授業担当教員のステレオタイプなどの分析の必要性も確認された。 そこで、1.学部3年次に日本語課程の学生全員に日本留学を課す日本語課程を持つイギリスまたはオセアニア地域の協定校を調査校として、学習者条件を一定程度に確保し、異文化体験のプロセスで明らかになっている再適応の状況を踏まえつつ、留学前・中・後のPAC分析法を研究手法とした縦断的研究を行う。その際、日本語授業を学習者要因の一つとして、先方の日本語教育担当者と連携し、留学前後の情報を直接得るとともに、教員への調査も並行して実施する。 2.異文化への対応の様子などを含めた形で学習者要因を詳細に検討し、学習者と読解教材とのインタラクションとの関連を見る。3.上述の1および2の成果から教材論に貢献する成果を発信する。4.上述の1-3をもとに、異なる読みをする日本語学習者相互のインタラクションを生かした授業を実施し、授業運営に貢献する成果を発信という計画を立てている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、昨年度実施した留学前の日本語学習者を対象としたPAC分析インタビューの文字起こし作業を行い、データ化を進めるとともに、結果の分析に着手した。 また、当初の計画通り、2013年3月に留学中の日本語学習者を対象としたPAC分析インタビューをほぼ実施できた。今回の留学中の調査については、送り出し校の日本語教育担当者との連携により順調に行えた点があり、日々の教育研究連携の重要さをあらためて認識した。 今年度の計画に、調査計画の調整を入れていたが、これまでの調査結果から送り出し校(留学前)の日本語教育の影響と思われる学習者の傾向が見える点も出てきたので、送り出し校の日本語担当教員との対面調査の重要性があらためて明確になったが、これについては、留学後の調査時に現れた連想語もあわせてみて、留学後の調査時に、実施するのが適当であろうという判断から、平成24年度ではなく、平成25年度に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、(1)丸山(研究代表者)と小澤(研究分担者)が留学前および留学中の学習者を対象におこなったPAC分析の結果の考察を行う。 また、(2)丸山(研究代表者)と小澤(研究分担者)がこれまで実施したPAC分析を総合して学習者が教材から受ける影響と学習者要因との相関の解明を目指す。(3)研究成果を踏まえ、異なる読みをする日本語学習者相互のインタラクションを活用した授業を実施する。(4)(3)について、学習者対象にPAC分析を実施、結果の考察を行う。そして、本研究の成果を国内外の学会・研究会で広く報告し、教材と学習者との関連に着目した理論の構築に向けた提案を行う、という4点を計画した。 そこで、前半の活動には、留学前および留学中の日本語学習者に対して実施したインタビューのデータ化を進めるとともに、ひきつづき分析を進めたいと考えている。また、3月に留学後の日本語学習者に対するインタビューおよび日本語教育担当者との面談を実施するために英国に出張する計画である。 英国出張の前に、できるかぎりデータ分析を行うことにより、出張時の調査の質をより高めたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度計画していたインタビュー結果のデータ化の作業がやや遅れ気味であったことと、渡英し日本語教育プログラム関係者に面談する計画を、次年度に持ち越し留学後の学習者対象の調査と同時に実施することにした。 そこで、次年度はまずその作業を進めるために人件費を活用し、できるだけ早く留学中の調査についても分析にとりかかれるようにしたい。 また、留学後の英国出張を行うとともに、今回の研究活動の成果の一部を公開することを目的とした海外出張(カナダ・トロント)を行うために旅費の執行を計画している。
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