本申請は『PAC分析法を活用した学習者が日本語教材から受ける影響と学習者要因の解明』(平成19年度-21年度基盤(C)課題番号19520449)の発展的研究として、信頼性の高い質的調査の手法であるPAC分析法を研究手法とし、協定校との連携により、学習者条件を一定に保った形で、短期交換留学プログラム生の留学前、留学中、留学後の縦断的研究を行い、教材作成・教材選択・授業運営への提言を行うとともに、留学生30万人計画を遂行する時代において、留学という観点から、日本語教育、特に日本語授業に新たな価値付けをし、教材論や授業論を成熟させるとともに、日本語教育以外の分野のさらなる支持と連携を得ることを目指した。本申請は、1年目に調査地域・調査対象の選定を行い、調査のための調整を行った上で、PAC分析で扱う読解教材の特徴に合った調査地域を選定・調整を行い、英国のカーディフ大学とロンドン大学SOASに決定し、研究代表者と研究分担者の2名が調査地域に渡り、留学前の日本語学習者を対象としたPAC分析インタビューを実施するとともに日本語担当教員への対面調査を実施した。また2年目には留学中、3年目には留学後の日本語学習者を対象としたPAC分析インタビューと 日本語担当教員への対面調査を計画通り実施した。 現在分析中ではあるが、現段階で同じ環境の学生でも留学が初めてかどうかという違いで留学中の体験の違いが出ること、送り出し機関での学習や日本語教育の位置づけの違いなどが学生の留学体験、そこから得るものにも影響を与えている可能性があるように見えることなどがわかってきており、成果の一部はトロントの学会でも中間報告として発表をした。現在は留学後の調査の分析中であるが、今後さらなる分析をして解明したい。また現地の教員とも対面での聞き取り調査だけでなく、データに基づいて共同研究をさらに深める予定である。
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