研究課題/領域番号 |
23520626
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 京子 名古屋大学, 留学生センター, 准教授 (60236578)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 留学効果 / 留学の長期的成果 / ラテンアメリカ / 帰国 / 頭脳流出 |
研究概要 |
今年度は「帰国しない留学」の中でも、留学後日本に残って仕事をする元留学生、または一度帰国してその後に日本に戻った元留学生について、聞き取り調査を行ない、今後の調査項目の検討を行なった。 計画通り5名の元留学生への聞き取り調査が実行できたが、40歳代~50歳代の多忙な時期にある彼らとの日程調整が難しく、一回の出張で数名への聞き取り調査をすることはできなかった。最終的には、名古屋近辺で2名、横浜で1名、神戸で1名、東京で1名と、別個に面接を行なった。 これまで、母国に帰国した元学生たちへの聞き取り調査を行なってきたが、今回帰国していない元留学生への調査の中で特徴的だったのは、第一に、日本に滞在している彼らが、調査の使用言語として日本語を選んだことである。長期間日本で仕事をし生活しているため、日本語でコミュニケーションすることがごく自然なことになっていることが分かった。第二に、面接の内容を録音することに躊躇する元留学生が複数いた。現在も日本で生活する彼らにとって、日本に残るという選択をするに至った様々な人間関係は現在にもつながっており、慎重な対応が必要である。この点については今回は調査対象者が少数であり一般化することないが、今後さらに調査をしていく必要がある。第三に、日本留学の中で深めた専門知識や技能を、何らかの形で生かしている、または生かす努力をしている様子が確認できた。生活の糧は専門とは別の分野で得ている元留学生もいたが、ボランティアでの仕事として、または将来へ向けての準備として、日本社会および母国の人々と関連づけて専門分野を継続していた。 長期間日本で生活していることで、母国との直接の関係が薄れ、母国の家族や人脈を失いかけている場合もみられたが、日本に滞在する母国出身者や関連地域の人々との関係を築き、様々な形で意識的に母国に貢献していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ある程度予想されたことであるが、留学後数十年を経ている元留学生のデータ入手が難しく、最近入手したデータにも変更が多く、新たに追跡しないといけない場合が多かった。帰国していない元留学生たちの住所には移動が多いことがうかがわれる。大使館や元留学生会、これまでの協力者たちのつてをたどって連絡をしているが時間的負担が大きい。 また、連絡がとれても、予想よりも協力の申し出が少ないことが懸念材料としてあげられる。彼らが非常に多忙な日々を送っていることは予想通りであるが、それに加えて、日本に残っている元留学生の場合は、日本が現在も自らの生活・仕事の場であり、特別な位置にあるわけではないことや、留学時代の人間関係が現在も継続しており、調査に対しては慎重になることも、理由として考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は日本国内に加えて、多くの元留学生が向かったスペインでの聞き取り調査を計画している。一定の日程内で効率的に聞き取り調査を行なうために、既に関係者への連絡を始め、元留学生たちの所在確認をとり、協力依頼をしつつある。しかし昨今の経済状況の悪化により、スペインを離れた元留学生もおり、住所が変化しつつある。スペインに限定せず調査を行なえるよう、予算配分の調整が必要になることが予想される。 その翌年にはアメリカ合衆国・カナダでの調査を予定している。出身国から地理的により近く、対象になる元留学生は現在も多くいると考えられる。 いずれにしても、現在のように世界経済の変化が大きい時期には、元留学生の生活にも変化が大きいようである。時勢によって柔軟に調査方法を適応させていく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
スペインでの聞き取り調査を予定しているが、上記の理由により、ヨーロッパ内のスペイン以外の都市でも調査を行う必要が出てくることが予想される。予算配分を調整しながら柔軟な計画を立てる必要がある。 旅費以外に、調査地での補助を依頼する現地コーディネータへの謝金および聞き取り調査の録音内容の文字化に、研究費の多くを必要とする予定である。
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