研究課題/領域番号 |
23520627
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
川口 直巳 愛知教育大学, 教育学部, 助教 (60509149)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ブラジル人児童生徒 / 保護者 / 教員 / ブラジル人学校 / ブラジル / 公立小中学校 |
研究概要 |
現在日本に滞在している日系ブラジル人達の多くは、滞在長期化、定住化の傾向が進んでいる。公立学校に在籍する彼らの子ども達の多くは、教科学習内容の理解が依然として困難となっているケースが多く、日本で成長していく子ども達の進学問題は、大きな課題である。本研究は、実態調査と共に、立場が違う複数のブラジル人児童生徒受け入れ学校の相互理解から、連携したケアの推進を目指すことを目的とし、23年度は主に下記の3つの実態調査を行った。(1)公立小中学校での調査:日本の公立の小中学校の教員にインタビューし、外国人児童生徒を受け入れにあたっての問題点(特に進路問題)、保護者への要望等を明らかにした。(2)日本にあるブラジル人学校H校での調査:生徒、保護者を対象に実施したアンケート結果を分析した結果、保護者の約67%が子供たちに対し大学、短大、専門学校への進学を希望しているのに対して、100%近い子どもたち(高校生)が大学もしくは専門学校への進学を希望しており、保護者と生徒に進学意識の差があることが分かった。これらの結果を踏まえ、保護者とその子ども達が抱える問題点(進路問題含む)、将来計画などについてH校の教員と協議した。(3)ブラジル調査:帰国した子ども達が在籍する学校、来日経験がある子どもとその保護者にインタビュー調査を行った(縦断調査を含む)。また日本語とポルトガル語、両言語の語彙テストを子ども達に実施し、両言語における語彙力を調査した。その結果、日本語とポルトガル語、両言語において語彙力が低い子ども達がいる事が明らかとなったが、ブラジルの学校現場では問題化されていないことが分かった。 これらの調査から明らかになった事実を、調査を行った教育機関同士で共有しすることにより、お互いの相互理解を図り、成長する彼らの将来保障を共通目的とし、長期的な支援につなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブラジル人学校での調査において、アンケート調査後に保護者へのインタビュー調査(10人)を予定していたが、昨年の震災の影響で、学校側が保護者への対応等に追われたり、生徒の入れ替わりが激しい時期があったため、アンケートの回収が遅れ、その結果保護者へのインタビューが23年度中にはできなかった。このインタビュー調査は、24年度に予定している。またこれらの調査の遅れや、ブラジル調査が3月にしかできなかったため、23年度に予定していた公立の小中学校の教師とブラジル人学校の教師との研究会が実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は下記の計画で研究を推進していく予定である。(1)第1回の調査(H23年度調査)の分析と報告(発表):23年度調査で収集したデータを分析し、調査報告書を作成し、調査校や調査対象者へ報告。また、学会で調査結果の発表を行う。(2)相互理解に向けての第1回研究会の実施:第1回調査を行った学校のうち、公立の小中学校の教師とブラジル人学校の教師で研究会を行い、調査によって明らかになった問題点の解決策を考える。この研究会では、2012年2月までサンパウロ州教育局に勤めていた日野寛幸氏を招待して講演していただく予定。(11月予定)(3)具体的なケアの実施に向けての準備:研究会で考え出された問題点の解決策から具体的なケアを検討し準備にあたる。(4)第2回調査によるデータ収集:24年度は、次の3箇所での調査を予定している。1、公立の小中学校での教員対象インタビュー調査。2、ブラジル人学校での調査:アンケート調査(生徒、保護者、教員対象)、インタビュー調査(生徒、保護者、教員対象)。3、ブラジル調査:インタビュー調査(帰国児童生徒とその保護者、学校教員対象)、語彙調査(帰国児童生徒対象)。縦断調査により、ブラジルに帰国後年数が経過するにしたがっての問題の変化、新たに生まれた問題点等を明らかにする。また、日本語とポルトガル語の語彙力の変化も調査し、語彙力が帰国後の教科学習内容理解にどのように影響しているかを調べたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度に行ったアンケート調査とブラジル調査の時期の影響で、23年度に予定していた公立の小中学校の教師とブラジル人学校の教師との研究会が実施できなかったため、この研究会にかかわる謝金等の研究費の使用ができなかった。この研究会は24年度に実施予定である。 24年度の研究費においては、上記の研究計画にもとづいて適切に使用する予定である。
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