現在日本に滞在しているブラジル人達は、長期滞在化、定住化傾向にあり、日本で公立学校に在籍する彼らの子ども達の多くは教科学習内容の理解が困難であるため、高校進学が難しいケースが多い。また、日本でブラジル人学校に通う子ども達も高校卒業後に実際にブラジルに帰国し、大学進学できる子ども達の数は限られており、日本で成長するブラジル人の子ども達の進学問題は大きな課題となっている。本研究は実態調査と共に、立場の違う複数のブラジル人児童生徒の受け入れ学校の相互理解から連携した支援を目指すことを目的とし、25年度は主に下記の2つを実施した。 ①ブラジル人学校での調査:公立学校に在籍経験があるブラジル人児童生徒とその保護者にアンケート調査を行った結果、公立学校での勉強についていけない、高校に進学できなかったなどという理由からブラジル人学校に転校を決めたケースが多いことが分かった。また、子ども達は、公立学校での課外活動や遠足など、教科学習以外の活動が大変楽しかった思い出としてあげていて、ブラジル人学校では少ない勉強以外の活動を保護者と児童生徒両方が評価していることが分かった。悪い思い出としては「いじめ」が多く、公立学校への要望にもいじめ問題を先生に解決してほしかったことなどがあげられていた。 ②ブラジル調査:帰国した児童生徒とその保護者へのインタビューと両言語(日本語とポルトガル語)での語彙テストを実施した(縦断調査)。その結果、ほとんどの保護者が子ども達に日本語の維持を求めていること、帰国後ポルトガル語の語彙力に著しい伸びがみられた生徒は日本語の語彙力もそれほど低下していないことなどが明らかになった。 本研究では、研究期間の3年間を通し、調査結果をできるだけ広く公開できるよう、学会発表だけでなく近隣の教育委員会等で情報提供に努めてきた。
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