研究課題/領域番号 |
23520628
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
蓮池 いずみ 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 学術研究員 (10599020)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 助詞「は」 / 主題卓越言語 / 主語卓越言語 / 言語転移 / 習得段階 / 英語母語話者 / 韓国語母語話者 / 中国語母語話者 |
研究概要 |
本研究の予備調査として、過去に別の研究の調査(日本語学習者の空間表現習得に関する調査)で収集したデータを本研究のテーマである「は」の習得という観点から再分析した。その結果、以下の結果が得られた。 韓国語話者は日本語話者と同様、「は」を空間名詞とともに使用するパターン(例:屋根の上では男の子がギターを弾いています)を最も多く使用していた。韓国語は日本語と同様主題卓越言語で、「は」にほぼ対応する助詞も存在するため、日本語と類似した母語背景がプラスに働いたと推測できる。一方、中国語話者は「は」を空間よりも人物を表す名詞とともに多く使用しており(例:屋根の上で男の子はギターを弾いています)、空間と人物の両方に「は」を付加するパターン(例:屋根の上は男の子はギターを弾いています)も見られた。中国語では主題を語順で表し、助詞「は」のような明らかなマーカーはないため、主題の認定が困難であると言われている。このような母語背景の違いが日本語や韓国語とは異なる「は」のパターンにつながっている可能性がある。また、英語話者には空間を表す名詞との使用が極端に少なく、人物を表す名詞との出現と、空間にも人物にも「は」が付加されないパターン(例:屋根の上で男の子がギターを弾いています)が大半を占めていた。これは主題卓越言語ではなく主語卓越言語である英語の影響である可能性がある。 この分析により、中国語話者は「人物+は」→両方に「は」→「空間+は」、英語話者は「人物+は」→「は」なし→「空間+は」の習得段階を経るという仮説が立てられた。この結果は、今後行う予定の「は」の使用における言語転移に関する調査に新たな示唆を与えるものとなった。具体的には、当初の予定にはなかった「習得段階に関する仮説」を本研究の調査目的の一つとして加えることを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度に調査(データ収集)を実施する予定であったが、予備調査(「研究実績の概要」で述べたもの)を進める中で、本研究の調査内容に一部変更を加える必要が生じた。そのため、調査に向けての準備に予定以上の時間がかかり、同年度中に実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に行う予定だった調査(データ収集)を次年度中に実施する予定である。調査の実施にあたっては、被験者の募集や調査の実施時における補助を研究協力者に依頼する予定である。また、収集したデータの分析も次年度中に開始する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に使用する予定であった旅費、人件費、謝金等を次年度中に使用する予定である。
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