研究課題/領域番号 |
23520628
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
蓮池 いずみ 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 学術研究員 (10599020)
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キーワード | 助詞「は」 / 主題卓越言語 / 主語卓越言語 / 言語転移 / 助詞選択ストラテジー / 英語母語話者 / 韓国語母語話者 / 中国語母語話者 |
研究概要 |
H24年度には、助詞「は」の習得に関する新たなデータ収集を行った。データの内容及び主な分析結果は下記のとおりである。 1)データ:日本語母語話者30名及び英語を母語とする日本語学習者(初級~中上級レベル)40名に対して、以下の調査を行った。①絵を見て文を(提示された語を使用して)完成するテスト(筆記)。②助詞「は」と「が」の選択テスト(筆記)。③①の問題における助詞「は」の使用に関する内省調査(日本語学習者のみ)。 2)分析結果:①文完成問題:日本語母語話者の多くが場所名詞の後に「は」を使用している(例:3階では女の子が窓の外を見ています)のに対し、英語母語話者の日本語能力が低いグループには人物を表す名詞の後に「は」を使用する(例:3階で女の子は窓の外を見ています)傾向が見られる。②助詞選択問題:学習者には、対比的な文や否定文における「は」(例:教室に伊藤さん(は)いますが、田中さんはいません)→「が」、従属節の中の「が」(例:松本さん(が)家に来たとき、私は家にいませんでした)→「は」とする誤りが目立つ。また、従属節内の主語が「人物」であるときに「は」を使用する率が高い。③内省調査:①の問題で人物を表す名詞に「は」を使用した理由として、学習者は「主語には「は」を使うから」、「「は」はisの意味だと習ったから」、「theのときは「が」、aのときは「は」を使う」などと説明していた。英語母語話者は学習の初期段階において、「主語=「は」」という誤った認識から、「は」を主語(特に人物)に付加してしまう傾向があると分析できる。 文完成問題において、以前の調査で行ったタスク(絵を描写するタスク)と同様の傾向が見られることがわかった。また、新たな調査(助詞選択問題と内省調査)の実施によって、学習者の助詞「は」と「が」の選択ストラテジーに関する新たな示唆が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度に全ての調査(データ収集)を終える予定であったが、被験者の確保に予定以上の時間がかかり、予定の半分(日本語母語話者と英語母語話者のデータ)の収集は終えたが、残りの半分(韓国語母語話者と中国語母語話者)のデータ収集は同年度中に終えることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)次年度は前半に残りのデータ(韓国語母語話者と中国語母語話者)収集を終え、既に収集済みのデータ(日本語母語話者と英語母語話者)との比較を行う。学習者のデータ分析にあたっては、被験者の第一言語(韓国語、中国語)を母語とする協力者に必要に応じて支援要請を行うことを計画している。 2)研究ののまとめを行う。研究成果を複数の論文にまとめ、発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に使用する予定であった旅費、人件費、謝金等を次年度中に使用する予定である。
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