研究課題/領域番号 |
23520632
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
轟木 靖子 香川大学, 教育学部, 教授 (30271084)
|
研究分担者 |
山下 直子 香川大学, 教育学部, 教授 (30314892)
|
キーワード | 日本語教育 / 文末 / イントネーション / 終助詞 |
研究概要 |
日本語の終助詞の音調を整理し、日本語教育でとくに重要と思われる「よ」「ね」の使い分けの指導方法について検討した。終助詞の音調は順接および低接という、前接の形式にどのように高さが続くかというアクセント的接続と終助詞の拍内でどのような音調変化をするか(平坦,疑問上昇,アクセント上昇,下降,上昇下降)の組み合わせによって記述することができる。 「よ」は(1)順接・疑問(またはアクセント)上昇、(2)低接・平坦の2種類の音調が意味に応じて使い分けられる。(1)は新情報提示または呼びかけの機能を持ち、(2)は聞き手に反する意見の述べ立てに用いられ、ときに強い反発や怒りを表現することもある。「ね」は(1)順接・疑問上昇、(2)順接・アクセント上昇、(3)順接・上昇下降の3種類の音調が意味に応じて使い分けられる。(1)は確認要求、(2)は旧情報提示または同意表明、(3)は感情表出またはそれに伴う同意要求の機能を持つ。「よ」は順接と低接の両方を取るが、「ね」は順接のみである。モ↑モダヨ,モ↑モダ↓ヨ,モ↑モダネは可能であるが、モ↑モダ↓ ネという言い方は共通語的な言い方としては認めにくい。また,「よ」は疑問上昇とアクセント上昇の使い分けはないが、「ね」は厳密にはききてからの応答要求の有無により2種類の上昇音調の使い分けがあると考えられる。 現在教師用として考案中の終助詞の音調のテキストは、(1)順接と低接、(2)終助詞の音調の一覧、(3)学習者への提示方法により構成される。教師にとっては(1)(2)は知識として必要であると考えられるが、実際の教室での指導では(3)が中心となる。 本年度は、この(3)の具体例を考案したが、今後は「です・ます」とともに使われる例文を使用する方向で検討をかさねていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各地での終助詞の音調の聞き取り調査については、簡易版を作成して効率化をはかり、被調査者の数を増やした点、また教師用指導書の具体的な提示方法を考案した点において、順調に進展していると評価することができる。 ただし、各地での終助詞の音調の聞き取り調査に関しては、東日本地域での調査の実施が遅れた点、また録音調査についても同地域ではじゅうぶんに行えなかった点において「当初の計画以上の進展」とは言いがたい。いっぽうで、研究発表の場における意見交換をとおして、当初考えていなかった提示方法や例文の種類等についてのアイディアを得ることができたことで、より効率よく研究をすすめることができた。 以上の理由により、「おおむね順調に進展している」と評価することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
終助詞および文末イントネーションについての教師用指導書を完成させる方向で研究を進める。具体的にはこれまでの例文で使用した「桃だ」「行く」のような一語文から「桃です」「行きます」「桃が咲いていますね」「私が行きますね」のような2~3語からなる「です・ます」を使用した文を例示として用いることにより、わかりやすくする。また、プレゼンテーションソフトのアニメーション機能を用いて音調の動きを目で確かめられるような方法ができないか現在検討中である。 本研究の目的は、音声に詳しくない教師や学習者であっても使いやすい、わかりやすいテキスト・指導書を作成することである。その点において、実際にクラス活動で教えることはなくても、教師にとって必要な知識である順接・低接の概念や拍内音調の種類をどのように提示し説明するかをじゅうぶんに検討する必要があり、これは今後の重要な課題の一つであると考えられる。
|