研究課題/領域番号 |
23520633
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
山下 直子 香川大学, 教育学部, 教授 (30314892)
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研究分担者 |
轟木 靖子 香川大学, 教育学部, 准教授 (30271084)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 言語習得 / カタカナ語 / 外来語 |
研究概要 |
本研究では、韓国語および中国語母語話者のカタカナ語習得における困難点と、学習者がカタカナに対して持つ意識の習得に与える影響を明らかにし、日本語学習者を対象としたカタカナ語(外来語などのカタカナで表記される語)の指導を行うための基礎資料を作ることを目的とする。 初年度である平成23年度は、カタカナ語の表記と発音に着目して聞き取り調査を行い、データを収集した。カタカナ語の習得には母語の影響が予想されるので、韓国語母語話者に対象を絞って調査を行った。得られた誤用を分類し、韓国語の音韻体系や韓国語にもある外来語とも比較し、習得上の困難点を探った。これらの結果をもとに指導内容や方法を検討して、初級修了の韓国語母語話者を対象として指導効果を検証した。指導の効果を計る実験のため指導群と同条件の統制群を設定し、指導群には長音などの特殊拍、濁音・半濁音や表記を中心とした指導を行った。指導の事前と事後にカタカナ語を聞き取るテストを行い、両群の結果を比較した。その結果、事後テストで両群ともに誤用数は減少したが、指導群は統制群よりも減少し成績が伸びる傾向にあり、指導の効果がみられた。また、指導群には指導の前後にカタカナ語に対する意識に関して質問紙調査を行った。意識調査の結果から、指導後にはカタカナ語の難しさが軽減する変化やカタカナ語に対する意識の深化がみられ、指導によって意識化につながる可能性が示唆された。 学習者はカタカナ語の指導を強く希望しており、カタカナ語の効果的な指導方法や教材を開発することは急務である。そのために引き続き実証的な検証を積み重ねる必要がある。研究成果の一部は、2011年日本語教育国際研究大会等において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画で平成23年度に予定していた韓国語母語話者を対象とした聞き取り調査と指導効果の検証を行う実験を予定通り行うことができ、おおむね順調に進展しているといえる。 初年度は韓国語母語話者に対象を絞って調査を行い、データを収集した。カタカナ語の聞き取り調査と先行研究をもとに指導内容や方法を検討し、韓国の大学で日本語を学ぶ学習者を対象として指導効果の検証を行った。その結果、一定の指導の効果がみられた。また、カタカナ語に対する意識調査も行い、指導後にはカタカナ語に対する意識の深化がみられ、指導によって意識化につながる可能性が示唆された。 上記の調査と平行し、カタカナ語や第二言語習得関連の文献を収集し精査した。2011年日本語教育国際研究大会(於:天津外国語大学 中国、2011年8月)と第8回日本語教育学会研究集会(於:香川大学、2011年11月)において研究成果の一部について発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られたデータの分析を進め、引き続き調査を行ってデータを収集する。特に、学習者のカタカナ語に対する意識が習得にどのように影響するのかを探るため、カタカナ語の習得と学習者の意識調査の結果との相関を分析する。また、カタカナ語の聞き取りだけでなく意味の理解を問う問題を加えて調査を行い、表記と意味の理解の関連も検討する。平成24年度は、中国語母語話者を対象とした調査も開始し、母語である中国語が与える影響を探る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費に関して、実支払額と申請額に一部差額が生じたため、差額分は次年度に使用することとなった。2012年8月の日本語教育国際研究会(於:名古屋)での研究発表とその他の研究会やデータ収集のための旅費に使用する予定である。さらに、関連分野の図書・文献と、調査の質問紙作成や回答の翻訳およびデータ入力の謝金等に使用する計画である。
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