研究課題/領域番号 |
23520633
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
山下 直子 香川大学, 教育学部, 教授 (30314892)
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研究分担者 |
轟木 靖子 香川大学, 教育学部, 准教授 (30271084)
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キーワード | 日本語教育 / 第二言語習得 / カタカナ語 / 外来語 |
研究概要 |
本研究では,韓国語および中国語母語話者のカタカナ語の習得の困難点とカタカナ語に対する学習者の意識を明らかにし,効果的なカタカナ語の指導を探ることを目的とする。 平成24年度は,これまでに得られた結果の分析を進めると同時に,引き続きカタカナ語の調査を行った。語彙知識に関しては,Nation(2001)が「形」「意味」「使用」の3つの側面から分類し,「意味」の下位分類として「語形と意味」をおいている。この語彙知識の語形と意味に焦点をあて,聞き取りテストにおいて昨年度の調査で行ったカタカナ語を聞いて書くことに加えて,語の意味についても母語あるいは原語である英語で書かせてデータを収集した。これまでの韓国語母語話者に対する調査結果からカタカナ語の習得や意識には母語の影響が予想されるので,平成24年度は中国語母語話者も対象者に加えて,産出的知識として正しい表記を書けるかどうかをみるだけでなく,受容的知識として意味が理解できるかどうかという点についても分析を行った。さらに,意識調査を行い,学習者のカタカナ語に対する意識や背景と聞き取りテストの結果との関連を探った。 その結果,語によって表記と意味の正答率にはずれがあり,音を聞いて意味を理解する受容的な知識のある受容語彙ではあっても,正しく表記することができる産出語彙としては定着していない語が多くみられた。また,聞き取りテストの結果とカタカナに対する意識や学習者の背景との相関関係をみた結果,表記は発音や読みの難しさに弱い相関が,意味の理解は英語学習歴と弱い負の相関がみられた。語の難しさだけでなく,学習者の意識や背景によってカタカナ語の難しさが異なることが明らかになり,カタカナ語の指導に関しても,個々の学習者に対応した指導の必要性が示唆された。研究成果の一部は,2012年日本語教育国際研究大会等において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画で平成24年度に予定していたカタカナ語の聞き取りとカタカナ語に対する意識調査をすすめることができ,おおむね順調に進展しているといえる。 カタカナ語の習得に関する調査については,語の表記だけでなく意味の理解をみる調査も行い分析を行うこととした。語彙知識の産出的な側面と受容的な側面の双方から分析することによって,より考察が深まると考える。また,これまで調査対象者としてきた韓国語母語話者に加えて,中国語母語話者も対象者として調査を開始した。カタカナ語の聞き取り調査と意識調査を中国の大学で日本語を学ぶ学習者と日本国内で日本語を学ぶ学習者に調査を行い,データを収集した。今後,韓国語母語話者と中国語母語話者の結果を比較することで,両者に共通する点と母語の影響を探ることが可能となった。さらに,国内と海外の学習者の結果も比較し,学習環境の違いについても検討を行う。引き続き調査をすすめて,効果的なカタカナ語の指導法について検討していきたいと考える。上記の調査と平行し,カタカナ語や第二言語習得関連の文献を収集し精査した。 研究成果の一部は,2012年日本語教育国際研究大会(於:名古屋大学、2012年8月)において発表を行い,『香川大学教育実践総合研究』26号に論文を投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度・24年度に得られたデータの分析をさらに進めるとともに,引き続き調査を行ってデータを収集する。これまでの結果をもとに,中国語母語話者と韓国語母語話者との比較を行い,両者に共通する点とそれぞれの母語の影響を考察する。さらに,中国語母語話者,韓国語母語話者と他のアジアの学習者はカタカナ語に対する意識に違いがあると先行研究で指摘されている。そこで,他のアジアの学習者としてタイ語母語話者にも同様の調査を行い,3者を比較することで考察をさらに深めたい。 成果をまとめて韓国語および中国語を母語とする日本語学習者を対象としたカタカナ語指導の方向性を提示することをめざす。得られた最終的な研究結果を取りまとめ,日本語教育学会,研究集会や関連する学会・研究会などで成果発表を行い,研究全体をまとめた研究報告書を作成する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は日本語教育学会や関連する研究会で研究成果の発表を行うための旅費,研究会等でのカタカナ語の習得に関する資料収集や,さらなるデータ収集のための旅費を研究分担者や研究協力者も含めて使用を予定している。日本語教育に関連する国際会議にも参加を検討する。その他にも関連分野の図書・文献の購入,調査協力者への謝礼用の文具等の購入,質問紙調査の自由記述による回答の翻訳および調査データ入力の謝金等に使用する。さらに,最終年度のため,報告書の印刷費や通信費(切手)が必要となる。
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